こもれびは日かげに生きるものにしか(関根裕治)

クリッピングから
讀賣新聞2023年4月25日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  こもれびは日かげに生きるものにしか
  与えられないやさしいひかり

          上尾市 関根裕治


    【評】木の葉で覆われているからこそ、木漏れ日は生まれる。
       「日かげで生きる」というとマイナスのイメージだが、
       見方を変えることでプラスの視点が生まれる。
       人生もまた……と思わせるところも魅力だ。


  五十年後にケーキより干し芋
  妻の好物であることを知る

          東京都 野上卓


    【評】ケーキより庶民的な干し芋というところにユーモアが漂う。
       なぜ思い込んだのか、なぜ気づいたのか、
       夫婦のドラマを想像させて楽しい一首。


  生まれたての嬰児(みどりご)を抱けばみっしりと
  春の鹿尾菜(ひじき)のような頭髪

            狭山市 古谷真利子


    【評】ひじきの比喩が、生命力を伝える。
       漢字で表記することで、いっそう躍動感を持った。