満月のドアノブぐんと手をかけて(山田香ふみ)

クリッピングから
讀賣新聞2023年11月20日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  満月のドアノブぐんと手をかけて
  夜空の裏の色を知りたい

        川崎市 山田香ふみ


    【評】満月をドアノブに見立て、
       そのドアを開けた向こう側の景色を想像している。
       メルヘンチックな可愛(かわい)らしさを持ちつつ、
       スケールの大きさが魅力だ。
       「ぐんと」が迫力と実感を伝えて効果的。


  戦争を知る子供たちが増えている
  ここでの「知る」は「わかる」ではない

            大津市 佐々木敦


    【評】あえて無骨に説明口調で表現した下の句に、
       強い怒りがにじむ。
       子供たちは、永遠に理解できない理不尽にさらされている。


   ぬくもりを消さないように渡される
   聖火みたいな焼き芋ひとつ

            越谷市 あきやま


    【評】なにげない一コマだが
       「聖火」の比喩がユニークにして的確。


今週の、もう1首。


  まだ半分あると思ってる
  人生のほんとの中間地点は不明

          オランダ 宮沢洋子