北村滋『外事警察秘録』(文藝春秋、2023)を読む。
「あとがき」より引用する。
(装丁/番 洋樹、装丁写真/黒田 寛(「東京タワー」より)
四〇年以上に及ぶ公務員生活の中で、
外事警察及びインテリジェンスとの関わりは長く、
内閣情報官及び国家安全保障局長の任期を含めれば二〇年にも及ぶ。
「外事警察史素描」
(『講座 警察法 第三巻』立花書房、二〇一四年三月刊所収)は、
制度の変遷の骨格を中心にまとめた、
言わば外から見た「外事警察」のデッサンに過ぎなかった。
一方、在任中から長年様々な任務を遂行した自らの視点で
外事警察をインサイダーとして語ることはできないかと常々考えていた。
それは、後人に自らの希少な経験を伝承することにもなるし、
事件や事象の歴史的意義を検証することにもつながると考えたからだ。
幸いなことに、月刊「文藝春秋」の新谷学編集長
(現・取締役文藝春秋総局長)から執筆を勧められ、
二〇二二年六月号から二三年八月号まで、断続的ではあったが、
「外事警察秘録」(全十二回)として、
特定秘密保護法の制定までを一区切りとする
貴重な連載の機会をいただいた。
本書は、基本的にそれらをまとめたものである。
また、連載中の二〇二二年七月八日に
安倍晋三元内閣総理大臣に対する銃撃事件が発生した際には、
急遽連載を中断して「追想・安倍晋三内閣総理大臣」を同誌に寄稿した。
警察・官邸勤務を通じて職務上関係が深く、
八年九カ月にわたり傍でお仕えした安倍総理への追悼の気持ちを込めて、
本書には同稿を特別付録として収録している。
(pp.260-261)
「はじめに」から引用する。
もとよりこの分野は、
保全を本義として多くの情報は開示されることはない。
本書は、かかる厳しい制約の中、
平成の裏面史を形成してきた外事警察の有り様を、
それに実際に携わった者の目を通じて
可能な限り伝えようとするものである。
(p.3)
本書目次は以下の通り。
はじめに
第一章 横田めぐみさん「偽遺骨」事件
第二章 日本赤軍との闘い
第三章 オウム真理教「ロシアコネクション」
第四章 経済安全保障ーー中国企業「華為(ファーウエイ)」の脅威
第五章 不正輸出を摘発せよーー北朝鮮
第六章 ロシアの背乗(はいの)りスパイ
第七章 プーチンのスパイとの攻防
第八章 三・一一福島第一原発をめぐる日米協力
第九章 在日コリアン 総聯+民団「統一計画」
第十章 山口組 マフィア・サミット計画
第十一章 中国スパイのTPP妨害工作
第十二章 特定秘密保護法案に職を賭した