佐藤優『正しさってなんだろうーー14歳からの正義と格差の授業』(Gakken、2023)

中学2年生のミナトとナギサは
不思議な図書館「ともしび」のロダン先生から
3日間の特別授業を受けることになる……
佐藤優『正しさってなんだろうーー14歳からの正義と格差の授業』
(Gakken、2023)を読む。


(イラスト:あすぱら)


「もくじ」を引用する。


  はじめに
  プロローグ ふしぎな図書館「ともしび」
  1日目 親って正しいの?


    第1の質問 「あなたのため」っていろいろおしつけてくるけれど、
          それって親の自己満足じゃないの?
            ▷ 勉強しなければいけない理由

    第2の質問 子どもには「ウソついちゃダメ」って言うのに、
         自分たちは平気でウソをつくのはなぜ?
            ▷ 約束を守るということ

    第3の質問 いつも「お姉ちゃんなんだから、がまんしなさい」と言われる。
         下の子ばかりかわいがって、ずるくない?
            ▷ ジェンダー平等

    第4の質問 いい高校、いい大学に行けってうるさい。
         自分のことは棚にあげて、なんでそんなことを言うのかな?
            ▷ メリトクラシー能力主義

    第5の質問 「お金出してるのは親なんだからね」って反則だと思う。
         そんなこと言われたら、何も言い返せない。
            ▷ 賃金と教育費の問題

    第6の質問 親の期待が重すぎる。野球は好きだけど、
         プロになれるレベルじゃないって自分が一番わかってるのに……。
            ▷ 親離れ・子離れ

    第7の質問 子どものスマホを勝手に見るのは反則じゃない?
            ▷ 親の過干渉と毒親

    第8の質問 親が食事をつくってくれません。
            ▷ ネグレクト


  2日目 学校や先生って正しいの?


    第9の質問 意味不明な校則が多すぎる。
         個性が大事とか言ってるのに、
         なんでも型にはめようとするのはおかしくない?
           ▷ 昭和な教育から、令和の教育へ

    第10の質問 スクールカーストってなんなの !? 
          同い年なのに、なんで下に見られなきゃいけないの?
           ▷ ヒエラルキー

    第11の質問 いじめがあっても見て見ぬフリをする大人は許せない!
           ▷ 同調圧力

    第12の質問 自分だって好きで不登校になったんじゃない。
          学校に行かないからって責めるな!
           ▷ 不登校、学ぶことをあきらめない

    第13の質問 先生はできる子ばかり見てる。えこひいきしてずるくない?
           ▷ エリート教育

    第14の質問 受験勉強で覚えたことは、大人になったら使わないって聞きました。
          それがホントなら、なんで勉強しなくちゃいけないの?
           ▷ 人類の知の発展


  3日目 同い年なのになぜちがうの?


    第15の質問 勉強が好きなのもスポーツが得意なのも人それぞれ。
          なのにどうしてねたんだり、足を引っ張ったりするの?
            ▷ 差異と格差のちがい

    第16の質問 イケメンでスポーツ万能で頭もよくてだれからも好かれる。
          神様、これって不公平では?
            ▷ 多様性

    第17の質問 「みんな仲良くしろ」って言われるけど、ウソっぽくない? 
          クラス全員と”親友”になんか、なれっこないのに。
            ▷ 集団の和 VS 個性

    第18の質問 自分は何をやっても下手クソで、いつもビリ。
          だれとも競争なんかしたくないのに、
          なんで順位をつけなきゃいけないの?
            ▷ 機会の平等と結果の平等

    第19の質問 塾代が高くて払えないと親に言われた。
          みんな塾で勉強してるのに、
          これじゃ最初から勝負にならないと思う。
            ▷ 教育格差とかくれ貧困


    第20の質問 都会の子は進学先も選べるし、
          情報もあふれててうらやましいです。
          私の地元にはそんな選択肢はなかった。
            ▷ 都会と地方の情報格差


  エピローグ ふたりの勉強部屋
  おわりに


本文から引用する。


  ロダン 人間は群れないと生きていけない生き物だけど、
      群れの中には序列があり、派閥(はばつ)があって、派閥同士の争いがある。
      大人になっても会社の中でハブられて居場所がなくなり、
      退職に追いこまれる人もいます。
      もちろん程度の差はあって、たまにイヤミを言われるくらいで、
      たいしたいじめがない職場もあるけれど、
      そういうことがまったくないクリーンな集団なんて、見たことがありません。


  ミナト 子どもいっしょじゃん!


  ロダン 世の中の大人は「いじめるな」ってエラそうに言うけれど、
      大人だって毎日、いじめるかいじめられるか、という世界で生きています。
      だから、スクールカーストなんて目じゃないんです。
      学校は社会の縮図です。
      だったら、いまのうちに慣れておいたほうがいいかもしれない。


  ナギサ 目の前が真っ暗って人も出てきそう……。


  ロダン 気持ちはわかるけど、どうせ社会に出てもさけられないことなんだから、
      いつ経験するかだけのちがいなんです。
      むしろ、子どものときに経験しないまま大きくなってしまって、
      社会人になってからいきなり強烈(きょうれつ)な序列(じょれつ)社会に
      身をおくほうがキツイかもしれません。


  ミナト クラスの輪に入れない人は、あきらめるしかないってこと???

                                 (pp.110-111)


       編集担当 古川有衣子(Gakken)/編集協力 田中幸宏(フリーランス