思い出の読売文学賞アンケートから

クリッピングから
讀賣新聞2024年2月19日朝刊
読売文学賞 75回を迎えて
「思い出の読売文学賞アンケート」から抜き書きする。


  【小説賞】

  安部公房砂の女
  「いま読んでも作家の想像力と知性に圧倒される」(須永紀子)

  和田芳恵『接木の台』
  「こんな地味な私小説を見つけ出す選者たちの眼(め)に感嘆三嘆」
  (川村湊

  大江健三郎『雨の木(レイン・ツリー)を聴く女たち』
  「『雨の木』が非在のものであるとしても、
   読後には『雨の木』のしたたりを感じてしまう」(宮田毬栄)

  村上春樹ねじまき鳥クロニクル
  「新しい文学が権威ある読売文学賞に認められ、
   小説に新しい時代を画した」(沼野充義

  小川洋子博士の愛した数式
  「見事な文理融合の世界」(渡部潤一

  川本直『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』
  「フィクションの極致」(高橋睦郎


【随筆・紀行賞】


  星野博美『コンニャク屋漂流記』
  「デビュー作から愛読してきた作者の新たな展開に
   瞠目(どうもく)した」(野崎歓

  小澤實『芭蕉の風景 上下』
  「芭蕉の句を現代によみがえらせた名文」(栗木京子)

  丸谷才一後鳥羽院
  「宮廷の歌人の魅力を語りながら、
   古代からの日本文学の流れを見直す画期的な労作」(富士川義之

  渡辺京二バテレンの世紀』
  「再読、さすがに重厚。読書の醍醐(だいご)味」(長谷川櫂


  【研究・翻訳賞】


  菅野昭正『ステファヌ・マラルメ
  「文学研究もまぎれもなく文学の一部を成していると教えられた」
  (野崎歓

  茨木のり子訳『韓国現代詩選』
  「翻訳詩もまた『志』である」(川村湊

  森亮『森亮訳詩集 晩国仙果 I II III』
  「読売文学賞受賞作の多くが時の経過とともに色褪(あ)せましたが、
  今なお新鮮です」(平川祐弘

  工藤幸雄訳『ブルーノ・シュルツ全集』
  「東欧の『マイナー』な作家が鏤骨(るこつ)の訳業によって
   日本語文学の財産になった」(沼野充義