クリッピングから
讀賣新聞2024年3月19日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。
家中に枯れた葉っぱが落ちていて
終着点で二歳はねむる
東村山市 月出里ひな
【評】外遊びで拾ってきた葉っぱだろう。
ヘンゼルとグレーテルのパン屑(くず)のように
たどっていけば、疲れ果てた二歳児がいる。
終着点という表現が、時間と空間の流れを感じさせて効果的だ。
剝げかけたネイルに乗せるラメ
いつか終わるとしてもいまじゃなかった
朝霞市 桐島あお
【評】このラメのように、修復して取り繕って、
もう少し終わりを先延ばできればよかった。
上の句と下の句の響きあいが絶妙だ。
向かいには名もない川が流れてて
川も私の名前を知らない
燕市 田巻由美子
【評】自然との向き合い方が対等で親しみがあって魅力的だ。
下の句にはっとさせられる。
川の前には、私も名もなき存在なのである。