芽のやうな寝癖をつけて浅春の(藤 雪陽)

クリッピングから
讀賣新聞2024年4月8日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  芽のやうな寝癖をつけて浅春の
  街ゆく早足のサラリーマン

        小諸市 藤 雪陽


    【評】まだ新人で寝坊でもしたのだろうか。
      寝癖の「芽」という素敵な比喩が、
      浅春と縁語のように響きあって、初々しい。


  負けたことが財産になるぐらいなら
  俺はとっくに大金持ちだ

         松原市 たろりずむ


    【評】励ましの言葉への反論だろう。
      今回だけでなく、これまでも負けてきたことを伝えつつ、
      ユーモアのある返しがいい。


  「トムとジェリー」が「ジェリーとトム」で無いように
  いつもあなたは右手を握る

               四街道市 かきもちり


    【評】たいした違いはないけれど、
      逆だとなんだかしっくりこない。
      左手ではなく右手を握る習慣をとらえた
      上の句のたとえが、ユニークで説得力がある。


今週のもう1首。


  ありがとうとても大事なものでした
  二度と降りない駅の時刻表

         三田市 藤原栄美子