五歳には五歳の地図のあり春は(小林真希子)

クリッピングから
讀賣新聞2024年5月20日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  カリビアンブルーの線を
  今年度目標の下に遠浅にひく

      東京都 富見井高志


    【評】カリビアンブルーは、
      カリブ海から名づけられた明るい水色。
      爽やかな色を選んでマークしつつ、
      「遠浅」というのは、じゃっかん自信がないのだろうか。
      海と縁語のように響く言葉遊びが面白い。


  とおいとおいむかしにわたしのMは逝き
  other's dayになりし母の日

           町田市 永井悦子


    【評】MotherからMがなくなるとother(他人)。
      せつない内容だが、機智も光る。
      結句に向かって謎が明かされてゆく語順が効果的だ。


  信号を正しく守るように子が
  蒲公英ごとに確かめる春

      越谷市 あきやま


    【評】蒲公英(たんぽぽ)に出会うたびに、
      律儀に立ちどまる子ども。
      止まれを意味する黄色信号と蒲公英の色合いが、
      うまく響きあった。


今週のもう1首。


  五歳には五歳の地図のあり春は
  土手で綿毛を吹いてからゆく

       平塚市 小林真希子