テレビジョンに命を吹き込んできた50年「CM博覧会」


カンヌ国際広告祭セミナーに参加しているのかと思うくらい、
質の高いセッションが目白押しだった。
ACC(全日本CM協議会)創立50周年記念
「コマーシャル博覧会〜CMの過去・現在・未来〜」
12月2日、3日の両日、有楽町マリオン朝日ホール他の会場で開かれた。
(出入り自由の一日券 2,000円。両日とも)



南勲「カンヌブランドの30年」、
小田桐昭「CMをつくってきた人たち、50年の物語」、
石井うさぎ、河尻享一、木村健太郎
「The Power of CM これを見ずに死ねるか」、
塚田由佳、古川裕也、澤本嘉光「楽しいカンヌ、学べるカンヌ」、
箭内道彦泉麻人大宮エリー伊藤洋介、misono「私のCM」。


最後のセッションだけは、
8時から友人との待ち合わせがあって終了前にやむなく出てきた。
どのセッションも講師の周到な準備や、
その場での洒脱なやりとりがあり、中身が濃く発見があった。



日本や日本を含む世界のテレビコマーシャル(ラジオCMも含む)が、
どんなアイデア、どんな表現で
人間同士のコミュニケーションを創ってきたのか。
第一日のドキュメンタリー映画 "Art and Copy"と合わせて見ると、
おおよそこの半世紀の世界のCMと作り手の鳥瞰図を
手に入れることができる。
過去の資料が雲散霧消してしまうことの多い広告にとって
幸福な催しであった。


自分が知識として知っていたことも、
他人の視点や洞察によって再編集され
プレゼンテーションしてもらうと理解が深まる。
自分の見方、考え方とのギャップに気づくからだ。



  (今回クリエイターズ殿堂入りを果たした
   三人のひとり、堀井博次さん。
   細谷巌さんデザイン、特別の真っ赤なトロフィーを手にして。
   他の受賞者は三木鶏郎さん、杉山登志さん。ともに故人)


チケットは売れていたと聞いていたのに
空席が目立つのがいかにももったいなかった。
会社単位でチケットを購入して、
実際に参加する人が少なかったとしたら、なんたる損失だろう。
お金さえ払えばいいというのは組織のエゴであり勘違いである。



これだけの空席が出るなら
当日半額なり、立ち見は無料にしてでも
学生や業界若手にもっと見てもらいたかったと残念に思う。
いまさら誰を責めることもできないが、
企画で成功して、集客に失敗した。
告知が不足していたのか。
若者たちがチケットの値段にためらったか。



7,000人の参加者を集めた
先日のインタラクティブ系コンファランスad tech:tokyoに比べて
会場の熱気が不足していたことは否めない。
次の金が生まれそうなところに人が群がるのは世の常である。
金の匂いの代わりに、
ものづくりに賭ける真摯なクラフトマンシップ
テレビジョンというメディアにアイデアの命を吹き込んできた情熱が
「CM博覧会」の各セッションに満ちていた。


このイベントを実現した関係者のみなさん、
講師を務めたみなさんに感謝したい。
ありがとうございました。



(文中一部敬称略)