岩明均(いわあき ひとし)『ヒストリエ』を読む。
2004年から2010年までに発刊された1-6巻である。
舞台は紀元前四世紀、古代オリエント。
後にアレクサンドロス大王の書記官となったエウメネスの
少年時代からの物語である。
- 作者: 岩明均
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/10/22
- メディア: コミック
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貴族の息子として育てられたエウメネスが
実は征服されたスキタイの奴隷の身分であったことを
突然明かされる。義父が殺された裁判でのことだ。
そもそもスキタイの勇士であった母は、
幼少のエウネメスを人質に取ったギリシャ兵士たちに惨殺される。
エウネメスはおぼろげにその事件を記憶している。
およそ歴史的真実というものは
こうした冷徹な事実の集積なのだろう。
岩明は登場人物たちからほどよい距離を取り
語り部エウメネスの影を物静かに務める。
(第6巻 pp.156-157より引用)
画がいい。
先頃開催されたメディア芸術祭入賞作品展で
原画が展示されていた。
ここまで緻密な線で構成するのかと驚くほど、
人物も動物(馬がその代表)も一コマ一コマ丁寧に描かれている。
岩明はマンガ部門大賞受賞でこうあいさつした。
「私がやってるのは紙やペンを使う原始的な作業。
先進的な賞の中にあっても、
原始的な手作業の喜びというものを忘れないような仕事を
していきたいと思っています」
(「コミックナタリー」より引用)
一年に一冊のペースの仕事量を「面目ない」と岩明は詫びる。
しかし、時間をかけた取材、手作業の喜びを忘れぬ職人の技がなければ
こうした壮大なスケールの作品は生まれない。
物語はまだ序章だが、ぶっちぎりの大賞受賞であった。
新国立美術館のマンガコーナーで読んだ続きと、
そのとき見つからなかった第一巻が読みたかった。
めったに行かないマンガ喫茶に行こうと思ったが
繰り返し読みたい傑作ゆえに、アマゾンでの全巻購入を決めた。
こうした作品に出会えると、
マンガが日本の誇る文化であることを再確認する。
- 作者: 岩明均
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/10/29
- メディア: コミック
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この先、物語はどこまで続くか分からぬが、
岩明には心身の健康に気をつけて描き進めてほしい。
作品を購入することで、僕は一読者として
岩明のマンガ家人生を応援していきたい。
(文中敬称略)