日本から花粉を届けるミツバチ


目覚めてシャワーを浴びたら
朝食を取る前にまっ先に地下の会場に行く。
きょうのセッティングができていないので不安なのだ。
お、MacBook Airを持った西洋人が機材チェックをしている。
しめた。彼にのろう。



事務局スタッフ・イーシャが既に手配してくれていたのか、
音声コードが用意されていて画面もスクリーンに出た。
いつだって最後に頼りになるのは現場スタッフだ。
彼らの名前と顔を覚えこちらの名前と顔を覚えてもらい、
どんな準備が必要かを妥協せず辛抱強く伝えるのが一番だ。
腹を立てたり、命令口調になるのは最悪の行動だ。



プレゼンテーションはうまくいった(と思う)。
話している最中に手応えがあったし、
終わった後に何人もの人から声をかけられた。
タイトルは "Pollen and Bees―Decoding the Dynamics of
Communications in the Social Media Era"。
「花粉とミツバチーソーシャルメディア時代の
コミュニケーションを解読する」。



2011年12月ジャカルタでリリースし、
2012年3月サンパウロでブラジル人同僚の助言を受け全面改訂。
その後4月ニューヨーク、5月東京と改訂を続け、
今回ムンバイで最新改訂版を届けた。
世界各都市の聴衆のフィードバックをもらいながら
一年かけて鍛え上げてきたオリジナルコンテンツである。
準備と並行してこの一年半ほど
同僚、後輩たちから多くの示唆と事例を提供してもらった。
僕ひとりの知恵では創れなかったコンテンツだ。



夕暮れのアラビア海沿いの道を散歩した後
ホテルに戻ってバーでビールを飲もうとしていたら、
インド人青年二人に声をかけられた。
きょうのプレゼンテーションに来てくれた二人だった。
同席して思いがけず雑談が弾み、
僕もインド広告業界周辺、生活全般について取材させてもらった。
僕自身はるばる日本から花粉を届けにきた
ミツバチになった気分だった。