好奇心と物語


仕事で成功したいと思うなら好奇心を持ちなさい
と教えてくれる人がいる。
はて、自分にとっていま好奇心とはどんなものだろうと考える。



ムンバイのホテルの部屋のメインテナンスをしてくれる初老男性が
どこでどんな家族と暮らしていてどんな夕食を取るのか。
それは気になる。
インド料理レストランで声をかけてくれた
まだ助手であろう女性がこの街でどんな暮らしをしているのか。
どんなボーイフレンドとどんなふうに愛を語り合うのか。
それは気になる。



答えは自分の想像力の彼方にあることで
僕には一生分からない。
僕には決して読めない市井の物語がそこかしこにあって
それは気になる。



一方政府や企業やプロフェッショナルと呼ばれる人たちが
ために作った物語にはとんと興味が持てなくなった。
僕自身も広告のプロフェッショナルとして仕事をする身。
さて、どんな物語を語れるのか、自分に問うてみる。
アラビア海に沈む夕陽とそこに集う人たちを眺めながら、
そぞろ歩く僕自身もあたりの好奇の目にさらされながら、
ふと問うてみる。