網野善彦『歴史を考えるヒント』(2001/2012文庫版)


網野善彦『歴史を考えるヒント』を読む。
言葉を通して日本の歴史を考え直す一冊である。
「百姓」という言葉が農民だけを指す訳ではない、と語られると
「え、そうだったの?」と意表を突かれる。


歴史を考えるヒント (新潮文庫)

歴史を考えるヒント (新潮文庫)


現代で差別語としてメディアで葬られた言葉が
天皇や皇族に近い聖なる職業だったことを知る。
聖が卑に変わるには時間と社会意識の変化の両方が必要だった。
そうしたことに気を止めずにいると僕たちの感覚は鈍磨し、
やがては思考停止になるに違いない。



講演録をもとに編集者・木村達哉が
網野の論文・著書から補遺を行った二人三脚の一冊である。
21世紀売上げ部数第1位の新潮新書の文庫版。
こうした本が売れるのだから、
日本社会の一般読者層の厚さは捨てたものではない。


(文中敬称略)