『いっきに学び直す日本史・実用編/近代・現代』(2016)


日本史が通史として頭に入ったのが
最大の収穫だった。
『いっきに学び直す日本史・実用編/近代・現代』を読む。
『同・教養編/古代・中世・近世』とともに二冊読了した。



駿台予備学校日本史課講師だった安藤達朗
原稿用紙3,000枚に及ぶ日本史通史の参考書を書き上げ、
『大学への日本史』(研文書院、1973初版)として出版された。
参考書は図書館も所蔵しないし、古書店で売買されることも少ない。
絶版になると「幻の図書」になる運命だ。


作家・佐藤優
山岸良二(東邦大学付属東邦中高等学校教諭)の助けを乞い、
現代に必要な改訂・修正を加え、世に問うた二巻の日本史である。
僕が社会人として歴史を学び直すときに一番手に入れたいのは、
個々の事実に基づきながら、時の力、人の力がどう動き、
歴史を作ってきたか、ダイナミズムの俯瞰である。
この本にはそれがあった。



10,000冊読破し世界史を書いたある実業家の本を
ずいぶん待ったあげく図書館から借りてきて本書と併読しようとした。
拾い読みして「あれ?この本はお子さまランチ?」と失望した。
確かに大量の読書で、
この方なりの歴史の受け止め方があることは分かった。
でも、それが緻密な思考とは僕には思えず、
自分として消化し直し、歴史の理解を深める助けには
到底なりそうになかった。


僕には向かなかっただけだと思い、
待機している方もたくさんいたので、そっと図書館に返しに行った。
全2巻のうち予約していた一冊はキャンセルした。



安藤・佐藤・山岸チームの本書のヒットで
書店の本棚(オンライン書店含む)には類書が増殖するようになった。
自分にとっての良書を見分けることが、
時間を浪費しないスキルになる。
合本kindle版が7月に発売になった。


編集の中里有吾(東洋経済新報社)、鈴木充(フリーランス)にも拍手。
素晴らしい仕事をありがとう。
本書復刊を一読者として祝福する。


(文中敬称略)