中村うさぎ/佐藤優『聖書を語る』(文藝春秋、2011)


神学的思考を身につけようと読者が考えたとき、
キリスト教の基礎は持ちながら、
歯に衣着せぬ斬り込みができる人物がいてくれると理解が速くなる。
一方通行のレクチャーではなくなるからだろう。
中村うさぎ佐藤優『聖書を語る—宗教は震災後の日本を救えるか』
文藝春秋、2011)を読む。


聖書を語る―宗教は震災後の日本を救えるか

聖書を語る―宗教は震災後の日本を救えるか


中村うさぎの「エピローグ」から引用する。


   神学は言うに及ばず、哲学、文学、歴史、政治……
   ありとあらゆることを佐藤優氏は知っている。
   (中略)


   私はとてもじゃないが
   そんなに大量の本を読めないし、
   たとえ読んだとしても理解できないに決まっているので、
   佐藤氏とのお喋りによってその知識に一部を分けてもらおうという、
   このうえなく卑怯でズルい方法を採ることにした(笑)。
   教師が優秀であれば、学ぶことは至上の快感だ。
   その点、佐藤氏は最高の教師である。
   (p.203-204)


聖書を読む

聖書を読む


一方、本書の続編『聖書を読む』(文藝春秋、2013)「あとがき」で
佐藤優はこう書いている。


   この年(2005年)の八月に
   中村うさぎ氏の『女という病』(新潮社)が刊行された。
   この本を読んだ瞬間に
   中村氏がプロテスタンティズムの神髄を体得している人である
   と直観的に思った。
   そして中村氏の作品をむさぼるように読んだ。
   (中略)


   一緒に聖書を読まないか
   という私の提案を中村氏が受け入れてくださり、
   ユニークな聖書研究会が始まった。
   その成果の第一作は、一昨年(2011年)の七月に上梓した
   『聖書を語る—宗教は震災後の日本を救えるか』(文藝春秋)だ。
   ここでは福音書を中心に
   イエスが救い主(キリスト)であるということについて議論した。
   (中略)


   本書は、日本語で読むことができる
   神学的な思考法を知るための最良の手引きであると自負している。
   (p.363-364)


女という病 (新潮文庫)

女という病 (新潮文庫)


二人の対談書第一作を読み、
中村うさぎに対する印象がガラリと変わった。
週刊文春」連載コラムを読んでいたときは、
自堕落を売りにしている露悪の作家としか思えず、
それ以上の興味が湧かなかった。
生きることへの独特の視点を持っていることを本書で知り、
うれしい驚きがあった。
いずれ小説も読んでみようと思う。


神学という、カタチの見えづらい領域に、
異色と思える二人でチームを組みアプローチしていく方法に
知的刺激を覚えた。
本書を読んだ後では、
少しも異色でなく、絶妙の組み合わせに思える。
佐藤優はタッグを組む相手の選び方が実に周到で自在だ。


神学の思考

神学の思考

(文中敬称略)