この人は構成がうまいなぁ、と思う。
章立ては「ヅケ」「ガリ」「イカ」「ウニ」「サバ」
「トロ」「ギョク」「タコ」「エビ」「サビ」
と鮨に関係した言葉を並べる。
- 作者: 柚木麻子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/01/24
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1983年から92年までの東京銀座を中心とした舞台で
女性OL本木青子(もときせいこ)が高級鮨店「すし静」職人、
一ノ瀬さんにほのかな恋心を抱く物語。
柚木麻子『その手をにぎりたい』を読む。
(小学館、2014/初出「きらら」2012〜13)
バブル渦中から弾けるまでの時代を
時々に流行った言葉、唄などの固有名詞を散りばめ、再現する。
当時20代から30代の社会人だった僕は、
「ああ、こんなふうに空気が流れていたっけ。
僕も渦中のひとりだったんだな」と記憶を新たにする。
バブルを体験していない若い読者たちに
その皮膚感まで伝えられるのか、どうか。
栃木のかんぴょう農家の家庭で育ち、上京・就職。
うぶだった青子はやがて不動産会社のやり手営業として
バリバリ仕事をこなすようになる。
座るだけで三万円とられる「すし静」に
身銭でときたま通える身分になる。
そして、バブル崩壊。
自分も周囲もすべてが変わる。
スタッフと役者、予算と時間に恵まれれば、
上質のテレビドラマになるだろうな、と思う。
(NHKが2016年、オーディオドラマにしている)
デビュー作、その後の作品を読んでいくと、
『ナイルパーチの女子会』に至る作家の成長が確かめられる。
文章がいいから、読みやすい。
肩も凝らなくて、息が抜ける。
タイトルの付け方にも、ユーモアのセンスを感じる。
- 作者: 柚木麻子
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(文中敬称略)