読売歌壇(讀賣新聞朝刊に毎週月曜掲載)の短歌選評が印象に残り、
この本を古書店サイトで注文した。
俵万智『考える短歌—作る手ほどき、読む技術』(新潮新書、2004)を読む。
- 作者: 俵万智
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/09/01
- メディア: 新書
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「はじめに」から引用する。
短歌は、心と言葉からできている。
まず、ものごとに感じる心がなくては、歌は生まれようがない。
心が揺れたとき、その「揺れ」が出発点となって、作歌はスタートする。
それは、人生の大事件に接しての大きな心の揺れであるかもしれないし、
日常生活のなかでのささやかな心の揺れであるかもしれない。
いずれにせよ、日頃から、心の筋肉を柔らかくしておくことが、大切だ。
そうすれば、さまざまな揺れに、柔軟に対応することができるだろう。
(p.7)
(略)
ついでに言うと、道具という点では、
これほど手軽なジャンルも、珍しいだろう。
あなたは、絵の具を揃えたり、カメラを購入したり、
楽器を準備したりする必要は、一切ない。
鉛筆一本とメモ用紙があれば、
とりあえず今日からでも、はじめられるのだから。
(p.9)
本書は「実践編」「鑑賞コーナー」の二部構成。
実践編は、季刊「考える人」2002年夏号〜04年春号に連載した
「考える短歌」投稿句から優秀作を一点、他に数点選び、俵が添削する。
鑑賞コーナーでは実践編で取り上げたテーマに関連した
プロ歌人の句を選び、鑑賞のツボを教える。
第一講から第八講までで取り上げた添削のポイントは以下の通り。
どれも具体的で即実作に応用でき、
投稿句が添削前と添削後でガラリと変わるのを見て、勉強になった。
第一講 「も」があったら疑ってみよう。
鑑賞コーナー① 必然性のある「も」
第二講 句切れを入れてみよう
思いきって構造改革しよう
鑑賞コーナー② 潔い句切れ
第三講 動詞が四つ以上あったら考えよう
体言止めは一つだけにしよう
鑑賞コーナー③ 動詞を重ねるには
鑑賞コーナー④ 体言止めの実際
第四講 副詞には頼らないでおこう
数字を効果的に使おう
鑑賞コーナー⑤ 数字の重み
第五講 比喩には統一感を持たせよう
現在形を活用しよう
鑑賞コーナー⑥ 比喩の力
鑑賞コーナー⑦ 現在形の迫力
第六講 あいまいな「の」に気をつけよう
初句を印象的にしよう
鑑賞コーナー⑧ 初句あれこれ
第七講 色彩をとりいれてみよう
固有名詞を活用しよう
鑑賞コーナー⑨ 様々な色、それぞれの意味
鑑賞コーナー⑩ 固有名詞の効果
第八講 主観的な形容詞は避けよう
会話体を活用しよう
鑑賞コーナー⑪ 主観をどう表現するか
鑑賞コーナー⑫ 会話の応用
『サラダ記念日』で俵が読書界に登場した頃を思い浮かべる記述があった。
第八講「会話体を活用しよう」での講義の一節だ。
現在は、口語体で多くの短歌が詠まれている。
私が短歌をつくりはじめたころは、まだ少数派だったが、
今を生きる自分の思いを表現するために、口語を取り入れることは、
ごく自然なことだった。
三十一文字に口語をなじませる方法として、とても有効だったのが、
会話体を使うことだ。
はじめから明確に意識していたわけではないが、
試行錯誤の結果、会話体を活用することが、多くなった。
地の文としては、まだ違和感のある口語も、
かぎカッコに入れてしまえば、
現在形以上の生き生きとした表情を見せてくれる。
違和感もおおいに減った。
(pp.155-156)
サラダ記念日 (河出文庫―BUNGEI Collection)
- 作者: 俵万智
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1989/10/01
- メディア: 文庫
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そのとき20代だった俵は、口語を短歌に取り入れ、
今を生きる思いを表現しようと挑戦していた。
切り開かれた領域にプロ、アマチュアが続き、短歌の世界を更新していった。
本書、そして読売歌壇投稿欄(選者に俵を指名できる)で、
その果実の一端を筆者は紹介している。
短歌を詠む技術としてだけでなく、文章を書く技術としても参考になる本だ。
- 作者: 松岡正剛
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/06/14
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