この本の著者略歴で1996年から
読売歌壇選者を務めていることを知った。
俵万智『未来のサイズ』(角川文化振興財団、2020)を読む。
(装幀 菊池信義)
「あとがき」から引用する。
短歌は、日々の心の揺れから生まれる。
どんなに小さくても「あっ」と心が揺れたとき、
立ちどまって味わいなおす。
その時間は、とても豊かだ。
歌を詠むとは、日常を丁寧に生きることなのだと感じる。
二〇二〇年、突然日常が失われた。
コロナ禍のなかで、これまでの当たり前が、
次々と当たり前ではなくなっていった。
今までにない非日常の暮らし。
けれどそれさえも、続けばまた日常になってゆく。
そこから歌が生まれる。
Iには、主にその時期のものをまとめた。
二〇一三年から二〇二〇年まで。
足かけ八年の第六歌集となる。
四百十八首を選んで構成した。
この間の個人史で一番大きかったのは、住まいを移したことだ。
まる五年を暮らした石垣島から、縁あって宮崎へ。
息子が中学生になるタイミングだった。
おおむねⅡが石垣島、Ⅲが宮崎での歌となる。
子育てを通して、社会のありようへの関心を深めた時期でもあった。
子どもたちの「未来のサイズ」が、
大きくたっぷりしたものであることを、祈らずにはいられない。
(略)
短歌は、日記よりも手紙に似ている。
読んでくれる人の心に届くことを願って、いま、そっと封をします。
(pp.179-181)
俵万智が本の題名にその一部を採用した歌は
こんな歌だ。
制服は未来のサイズ入学のどの子もどの子も未来着ている
(p.96)