100分de名著『伊勢物語』(高樹のぶ子)

クリッピングから
朝日新聞2020年11月14日朝刊
読書欄「週間ベスト10」


今週のベスト10は
紀伊國屋書店全店調べ、文芸部門(3〜9日)。
第1位は『伊勢物語NHK 100分de名著 2020年11月
高樹のぶ子著 日本放送協会NHK出版編(NHK出版)でした。


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7月の吉本隆明共同幻想論』(講師:先崎彰容)が面白かったので、
以来定期視聴を続け、11月の『伊勢物語』も見ています。
「100分de名著」がいいのは、
自分の選書なら読まないような名著に気軽に取り組めることです。
解説、朗読、アニメーションなどを駆使して、
門の入り口までは連れて行ってくれます。



テキストの「はじめに—業平の歌に導かれて」に
高樹講師がこう書いています。


  そして時が経ち、作家となった私は
  『伊勢物語』を在原業平の一代記として小説化した作品
  『小説伊勢物語 業平』(日本経済新聞出版)を発表しました。


  『伊勢物語』は百二十五の短い章段に分かれ、時制もバラバラ、
  業平以外の歌やエピソードも多く入り込んでいますが、
  それをシャッフルして取捨選択し、時間軸の糸を通して、
  業平の一生をたどる物語にしたのです。

                      (pp.6-7)



番組では原典と『小説伊勢物語 業平』を交互に使用しながら
日本最初の歌物語を読み解いていきます(朗読:野村萬斎)。
僕が注目したのはこれに続く一節でした。


  私は小説家として長く純文学の世界にいます。
  芥川賞の選考委員も二十年近く務めてきました。
  しかしどこかで、自分の純文学的な殻を脱ぎ捨てたい、
  いつか新たなステージに入り、
  現代の文学ではなく古典と思いきり格闘したい、そう思っていました。


  そして七十歳になったのを機に、
  平安初期の説話集『日本霊異記(にほんりょういき)』を題材にした
  『明日香さんの霊異記』(潮文庫)を執筆。
  次に格闘の対象に選んだのが『伊勢物語』でした。

                            (p.7)


功成り名を遂げた作家が
七十歳で冒険し格闘する決意をすることが素晴らしいと思ったのです。
『明日香さんの霊異記』と改題する前の
単行本『少女霊異記』(文藝春秋、2014)を借りてきて読み始めました。
高校生のときから地名に取り憑かれ、
20歳になった今、薬師寺非正規社員として働く高畑(たかばたけ)明日香が主役です。
肩の凝らない、ミステリー仕立ての小説です。


少女霊異記

少女霊異記

明日香さんの霊異記 (潮文庫)

明日香さんの霊異記 (潮文庫)


「100分de名著」の番組から始まって、
高樹さんの以前の作品にまでたどり着きました。
こうした寄り道は、自分でもこの先どこに行くのか予想がつきづらく、
それだけ楽しみがあります。


(番組視聴の副読本として購入しました。このシリーズは入門しやすいです)