政権と検察の暗闘は2016年夏に始まっていた。
長年に及ぶ筆者の丁寧な取材、明快な筆の力で
闘いの構造が時系列として理解できた。
村山治『安倍・菅政権 vs. 検察庁ー暗闘のクロニクル』
(文藝春秋、2020)を読む。
「あとがき」から引用する。
ジャーナリズムの世界に入って47年になる。
その間多くの時間を、特捜検察が摘発する政界汚職や
大型経済事件の報道に費やしてきた。
毎日新聞大阪社会部で大阪地検特捜部を担当した
1980年代初めころまでの筆者は、正直にいうと、
特捜検察を、総理大臣の汚職まで摘発する強力な捜査機関とみていた。
金権・腐敗政治に目を光らす庶民の味方のイメージだ。
その見方が変わったのは、東京社会部に異動し
85年に東京地検特捜部を担当してからだ。
国税庁の徴税コストの削減につながる大掛かりな脱税事件や、
大蔵省の金融再編政策を背景とする銀行合併の邪魔になる
相互銀行の経営陣を逮捕した事件などの取材を通じ、
検察と大蔵省(現財務省)との密接な関係を知ったからだ。
検察は、大蔵省を中核とする官僚中心の護送船団体制の守り本尊だった。
(略)
(pp.280-281)
本書を読み進んでいくと、
主要人物である検察庁の黒川、林、稲田の仕事ぶり、人柄が彷彿としてくる。
読者として、ことの善悪の判断をする以前に、
政権や法務・検察の持つ内在論理が見えてくる。
目次は以下の通り。
序章 毒が回った政権
第1章 黒川と林、そして稲田
第2章 16年夏の陣ー事務次官人事への介入
第3章 17年夏の陣ー黒川続投
第4章 17年冬の陣ー3度目の正直を拒んだ上川法相
第5章 官邸の守護神の実像
第6章 苦肉の策
第7章 河合捜査とコロナ禍騒動
第8章 法務・検察の迷走
第9章 「決着」と「総括」
あとがき
- 作者:村山 治
- メディア: 単行本