隆明と源一郎

NHKラジオ第1/2021年2月19日 21:05〜21:55
「高橋源一郎の飛ぶ教室」前説より


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NHKサイトより)


若かりし源一郎が小説家を志し
新人賞に応募し始めた頃の話。
第一作はあえなく落選。
第二作は、選考委員でなく、
作品に敬服していた
吉本隆明ただひとりに向けて書いた。
佳作。
委員たちからは
「読むに値しない」と酷評された。


失意の中、雑誌で始まった隆明の連載を読む。
そこに、自分の、佳作に過ぎなかった作品を
「新しい」と隆明が取り上げていた。
こんなことがあるのか……


編集者は「自分には良さはわからないが、
隆明さんが褒めているなら出してみるか」と単行本化。
それが、源一郎のデビュー作
「さようなら、ギャングたち」だった。


晴れて作家になった源一郎は、
生前の隆明に三度ほど会う機会があったが、この話はできなかった。
自分から本人に話すのは恥ずかしかったのだ。
このことがあったから、
源一郎はいまでも新人の作品はきちんと丁寧に読むことを心がける。


高橋源一郎
70歳。
現役作家にして、「飛ぶ教室」校長。
いい話だったので書き留めた。


放送は「NHKらじる★らじる」
2021年2月26日まで聴取できる。
第一部「ヒミツの本棚」は穂村弘著『短歌ください』
『短歌ください 明日でイエスは2010才篇』
第二部「きょうのセンセイ」は歌人穂村弘(ホムホム)。

(文中敬称略)



短歌ください (角川文庫)

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