クリッピングから
朝日新聞2021年2月27日朝刊
読者投稿欄「声」
自転車の高齢男性が倒された!
主婦 塚越静枝(埼玉県 71)
塚越さんの感動をお裾分けしてもらいました。
踏切の手前で車を一時停止しようとした時のこと。
高齢の男性が自転車でゆっくり向こうへ渡るのを、
若い女性の自転車が疾風のごとく追い越した。
かすかに接触したように見えた。
女性はそのまま走り去り、
男性は自転車ごともんどりうって倒れた。
私は車を安全な場所に止め、動けずにいた男性に駆け寄った。
男子中学生2人も来てくれ、3人でようやく助け起こす。
「足が少し悪いもんだから」と言いながら立ち上がる男性に
ケガはない様子。
その時。
走り過ぎた女性が100㍍ほど先で自転車を止め、
後ろを振り返って戻ってくるのが見えた。
騒ぎが聞こえたのか、何か不安を感じて振り返ったのか。
彼女は男性のそばまで来ると、
たどたどしい日本語で「ごめんなさい」とわびた。
男性は「あんたは大丈夫だったかい」。
意表を突かれた。
乱暴な運転に見えた女性が戻ってきて謝罪したこと。
倒された男性が文句は言わず、気遣う言葉をかけたこと。
この感動を誰かにお裾分けしたくなりました。
助けたり、助けられたり、謝ったり、気遣ったり。
その場にいた人たちの咄嗟の判断、行動が印象に残りました。