その校則はブラックか?

クリッピングから
朝日新聞2021年2月26日朝刊
池上彰の新聞ななめ読み」
身近で論議呼ぶ記事
校則裁判 小さすぎる扱い


今月の「新聞ななめ読み」。
池上さんは校則裁判の報道を取り上げ、
各紙を比較検討しました。


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  (略)
  どこで起きたニュースでも、
  私たちに身近だったり論議を呼んだりするテーマであれば、
  大きく扱ってもいいのではないかと思うのです。


  最近では2月17日の朝刊各紙の扱いを見て、その感を深くしました。
  学校の校則はどこまで認められるのかの裁判の判決が
  大阪地裁であったのですが、
  東京版は扱いが小さい社が多かったからです。


  どんな裁判だったのか。
  大阪府立高校の元女子生徒が、
  「茶髪を黒く染めるよう繰り返し指導され、精神的苦痛を受けたとして」
  (朝日新聞朝刊より)大阪府に慰謝料を求めたもので、
  次のような判決でした。


  <判決によると、生徒は2015年4月に入学。
   同校には「染色・脱色」を禁止する校則があり、
   教諭らは生徒に黒く染めるよう何度も指導。


  「黒染めが不十分」として授業への出席や
   修学旅行への参加を認めないこともあり、
   生徒は不登校になったとした>
  
              (同紙17日付朝刊)


  学校の校則といえば、
  最近は「ブラック校則」という言葉が生まれるほど、
  厳格な校則のあり方が問題になり、見直しを始めたところもあります。
  だから、この裁判はニュースになったのです。


  この裁判の原告は、
  毎日新聞によると「生まれつき髪が茶色なのに、
  教員から黒く染めるよう再三指導されて」とあります。
  朝日の記事だと、生徒の髪が生まれつき茶色かどうかが、はっきりしません。


  もし、生まれつきの黒髪を茶色に染めていたら
  「茶髪を黒くしろ」という指導に納得する人もいるかもしれません。
  毎日だと、生まれつきの髪の茶色を黒に染めるように
  指導されたことになります。
  これでは行き過ぎだと思う読者もいるでしょう。
  同じ判決なのに、記事の書き方で印象が変わります。
  (略)


  こうやって新聞を読み比べることで、
  同じニュースでも書き方が異なることに気づきますが、
  私が気になったのは、記事の大きさです。
  (略)


  日経の扱いの大きさが目立ちます。
  さらに日経は、この裁判について解説も掲載しています。


  <大阪府立高校の頭髪の黒染め指導を巡る今回の訴訟は、
   海外メディアが「学校の過剰な注文」と報じるなど国内外で注目され、
   各地で髪形などを厳格に定める「ブラック校則」を巡る議論の発端だった。


   ブラック校則は生徒の外見や行動などを過度に縛る校則を指す。
   規律を求める教育現場では校則が重んじられてきたが、
   社会で多様性の尊重が重視されるなか、
   校則のあり方も問われるようになってきた。
   (中略)


   校則見直しの動きも広がっている。
   大阪府教育庁は今回の提訴を受け、
   17年に府立高に校則の点検を指示した>


   ここまで書いてこそ、今回の裁判の意味が理解できます。


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池上さんの新聞の読み方をヒントにして、
コンビニで新聞を買うときは必ず2紙買って読み比べています。
記事だけでなく、掲載している広告にも差があることが分かります。
1紙だけを読み続けていると、
知らず知らずその社の考え方(≒経営方針)に影響を受けすぎるかもしれませんね。


新聞社も営利企業であることに変わりありません。
他の商品を選ぶときと同じように
生活者としての視点を持って購入し、読みたいと思います。
そう考えれば、あれだけ手間暇かけた商品を
120〜150円で入手できるのは有難いことです。


池上彰の新聞勉強術 (文春文庫)

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  • 作者:池上 彰
  • 発売日: 2011/12/06
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