若松英輔「100分de災害を考える」:池田晶子『14歳からの哲学』

Eテレ3月22日放送「100分de災害を考える」第4回(最終回)。
指南役・若松英輔池田晶子『14歳からの哲学ー考えるための教科書』
トランスビュー、2003)を取り上げた。
期待通り、力の籠もった講義だった。


100分de災害を考える 2021年3月 (NHK100分de名著)

100分de災害を考える 2021年3月 (NHK100分de名著)


若松が執筆したテキストから引用する。


  大事なことは平易な姿をしている

  日常の営みの前で立ち止まり、そこを深く掘ることができれば、
  それはそのまま哲学に直結する。
  叡智への扉は、見知らぬどこかではなく、私たちの眼前にある。
  それが哲学者・池田晶子の原点でした。

                          (p.80)


対話の相手を務めた伊集院光、安倍みちこがよかった。
伊集院は「分かったふり」をせず、自分の体験を元に
池田の剛速球に食らいついていこうと言葉を紡いでいく。


安倍は、若松が読み解く一言、一言に、
時折パァ〜ッと明るい表情を浮かべる。
「自分で分かった」うれしさが、番組を視ている僕にも伝わってくる。


14歳からの哲学 考えるための教科書

14歳からの哲学 考えるための教科書


若松は『14歳からの哲学』の最後の言葉を引用し、
こう語っている。


    真理は、君がそれについて考えている謎としての真理は、
    いいかい、他でもない、君自身なんだ。
    君が、真理なんだ。
    はっきりと思い出すために、
    しっかりと感じ、そして、考えるんだ。

               (『14歳からの哲学』p.204)


  この一節に、私は人生の大きな困難のなかで出会いました。
  人は、自分がそこに存在する限り
  真理から見放されることはない、というのです。
  これほど大きな希望があるでしょうか。


  あのときの衝撃を忘れることはできません。
  あのとき、私は確かなものを自分以外の誰かに
  求めようとしていました。
  そうしたとき、人は、自分のなかの声が聞こえにくくなり、
  自分を信じることができなくなります。
  池田晶子が示してくれたのは、まったく別の道でした。

                    (pp.102-103)


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池田の言葉は平易であるが、
簡単には理解できない。
若松が指摘する通りだ。
でも、ここには、
なにか確かなことを伝えようとする著者の意志を感じる。


自分の謎、人生の謎、宇宙の謎。
「悩むな 考えよ」
池田の言葉が聞こえる気がする。


14歳の教室 どう読みどう生きるか

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