『安倍晋三 回顧録』(監修:北村滋、聞き手:橋本五郎・尾山宏)(中央公論新社、2023)

僕が回った書店はすべて品切れ、増刷待ち。
早く読みたかったので電子書籍で購入。
安倍晋三 回顧録』(監修:北村滋)(中央公論新社、2023)を読む。



聞き手・橋本五郎、尾山宏の
「なぜ『安倍晋三 回顧録』なのか ー 「歴史の法廷」への陳述書」から引用する。


  私たちが安倍さんに
  「回顧録」出版のためのインタビューを申し入れたのは、
  首相辞任を表明される1か月半前の20年7月10日でした。
  お願いした一番の理由は、
  なぜ通算の首相在任期間で戦前の桂太郎を抜いて
  133年の憲政史上最長の政権になり得たのか、
  その理由と政策決定の舞台裏、煩悶と孤独の日々を
  ご自身に語ってもらいたいと思ったからです。


  欧米の指導者は、大統領や首相を辞めると、
  時を経ずに回顧録を出版します。
  それが伝統であり、指導的立場にあった政治家の責任だ
  と考えているからでしょう。
  しかし、日本の場合は違います。
  「書かれたものが歴史である」
  というウィンストン・チャーチル英首相の言のように、
  首相を退いてから多くの著書を残した中曽根康弘氏でさえ、
  本格的な回顧録天地有情』(聞き手・伊藤隆ほか、文藝春秋
  を出したのは退陣後10年近く経ってからでした。
  関係者に迷惑をかけてはいけないという配慮や、
  自らを誇るようなことは慎もうという
  日本的な美徳の表れかもしれません。


  それでも、退任後できるだけ早く振り返ってもらおう
  と思った第一の理由は、
  記憶が生々しい状態で語ってもらうことで、
  より真実に近づくことができると考えたからです。
  また、政治家に限りませんが、
  回顧録には濃淡の違いはあれ、自己正当化が付きまといます。
  それは避けられないことです。
  時が経てば、本人は意識しなくとも
  正当化や美化の度合いがさらに強くなるのは普通です。
  それを少しでも相対化できるのは、
  直裁的な言い方をすれば、「回顧録」を関係者の前に晒すことです。
  (略)


  『安倍晋三 回顧録』は22年1月にはほぼ完成、
  まもなく出版の運びになっていました。
  しかし、安倍さんからしばらく待ってほしいと「待った」がかかりました。
  安倍派会長として本格的に政界に復帰しようとしていました。
  内容があまりに機微に触れるところが多いので躊躇されたのでしょう。


  そうしているうちに不幸な事件が起きてしまいました。
  戦後第一級と思われる「回顧録」を眠らせてはあまりにもったいないと判断、
  安倍さんの四十九日が明けてから
  安倍昭恵(あきえ)夫人に出版のお願いに行きました。
  昭恵さんも安倍さんの机の上に「遺品」のように置かれているところを見つけたそうで、
  快諾していただきました。
  (略)


    編集:中西恵子中央公論新社) 
    協力:小野寺章、斉木章、鈴木由佳子


    本書は、2020年10月から21年10月まで、衆議院第一議員会館1212号室で、
    計18回、36時間にわたって行われた未公開のインタビューを書籍化したものです。