佐久間文子評:津野海太郎『かれが最後に書いた本』(新潮社、2022)

クリッピングから
新潮社「波」2022年4月号
かなしみと、不思議なおかしみ
津野海太郎『かれが最後に書いた本』
佐久間文子


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新潮社ホームページより)



  『かれが最後に書いた本』は、
  読売文学賞を受賞した『最後の読書』に続く
  津野さんの読書エッセイだ。
  (略)


  津野さんは、この本の中で、
  池内さん(引用者注:2019年に逝去した作家・池内紀)の
  『ヒトラーの時代』を二〇二〇年最初に読む本として選んだ理由に、
  息子である中東研究者の池内恵さんが「中央公論」に発表した
  「書き手としての父・池内紀の死」を読み、
  同年輩の書き手として「切ない衝撃をうけた」ことがあったという。


  亡くなる一週間前まで正誤表をつくっていたことや、
  人生の終わりを予感した池内さんが
  この本を書かざるをえなかった思いにも触れて、
  批判は批判として受け止めた上で書かれている。
  こういう書き方があったかと感じ入ったし、
  書き手であり、長く編集者であった津野さんの、
  本に対する誠実さが表れている気がした。

            (さくま・あやこ 文芸ジャーナリスト)


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佐久間文子の名は
『ツボちゃんの話:夫・坪内祐三』を読んで知っていた。
池内恵「書き手としての父・池内紀の死」は僕も読み、
池内紀のファンであっただけに気になっていた。
その二つの交点に津野海太郎がいて、
この本があることを知った。
読んでみたい。