眠る前にゆっくり少しずつ読む。
心のケアを受けているような気分になる。
中井久夫『治療文化論ー精神医学的再構築の試み』(岩波現代文庫、2001)。
Eテレ「100分de名著」(2022年12月放送)で指南役・斎藤環が
「中井の本で一冊選ぶならコレ」と推薦していた著作だ。
こんな一節がある。
引用する。
もうすこし専門化された精神衛生維持資源もある。
マッサージ師、鍼灸師、ヨーガ師、
その他の身体を介しての精神衛生的治療文化は
無視できない広がりをもっている。
古代ギリシャの昔のように、
今日でも「体操教師」(ジョギング、テニス、マッサージ)、
「料理人」(「自然食など」)、「断食」「占い師」が
精神科的治療文化の相当部分をになっている。
ことの善悪当否をしばらくおけば、
占い師、ホステス、プロスティテュートも、
カウンセリング・アクティヴィティなどを通じて、
精神科的治療文化につながっている。
カウンセリング行動は
どうやら人類のほとんど本能といいたくなるほど
基本的な活動に属しているらしい。
彼らはカウンセラーとしての責任性を持たない(期待されない)代り、
相手のパースナル・ディグニティを損なわない利点があり、
アクセス性も一般に高い。
(p.134)
◆初出ーー『岩波講座 精神の科学』第8巻所収
「概説ーー文化精神医学と治療文化論」(1983年12月)。
底本には同時代ライブラリー版(1990年、岩波書店)を使用した。
(p.256)