僕はキリスト教徒ではないが、
こんな礼拝堂なら一度は訪れてみたいと思った。
80歳間近のアンリ・マティス(1869〜1954)が画家人生の
すべてを注ぎ手掛けた南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂だ。
朝日新聞編集委員・大西若人の2023年6月10日朝刊記事から引用する。
この礼拝堂は、一つの出会いから生まれている。
大病を患い、1941年に手術を受けたマティス。
その介護にあたったのが、若いモニク・ブルジョワで絵のモデルも務めた。
戦時中、空爆を避けるために
ニースからヴァンスに疎開したこともあるマティスは
46年、76歳で再び同地で暮らし始め、修道女となったモニクと再会する。
そしてヴァンスでの礼拝堂建設を望む声を知り、協力を申し出る。
「無償で協力したどころか、
むしろ自作を売って資金をまかなった面があります」
とファーブルさん(礼拝堂シスター)。
「建築、ステンドグラス、壁画、家具、十字架まで
すべてマティスのデザインで、礼拝堂自体が総合芸術なのです」。
斜面に立つ礼拝堂の敷地は狭く、その制約も生かし切ったという。
すでに高齢ゆえに立ち仕事は難しく、
壁画などは座ったまま、長い棒の先に筆をつけて描いたとされる。
(略)
まさにファーブルさんが
「画家の人生の総決算のような作品」と語る通りだ。
マティスは光が長く差し込む、
冬の午前11時が最も美しいと語ったという。
(略)
マティスが
「訪れる人々の心が軽くなる」ことを願った礼拝堂から一歩外に出ると、
中世ヴァンスの落ち着いた街並みが見える。
(略)