手嶋龍一/佐藤優『ウクライナ戦争の嘘ーー米露中北の打算・野望・本音』(中公新書ラクレ、2023)

定期的に出版されるこの二人の対談本は見逃せない。
新聞・雑誌では得られない情報、識見がしばしば得られる。
手嶋龍一/佐藤優ウクライナ戦争の嘘
ーー米露中北の打算・野望・本音』
中公新書ラクレ、2023)を読む。



手嶋の「まえがき」から引用する。


  「ウクライナには21世紀の国際政局の活断層が走っている」
  佐藤優さんと私は、20年近くも前からそう指摘してきた。
  ロシアと北大西洋条約機構NATO)の狭間にあって、
  ウクライナの政権はその時々、ヤジロベーのように揺れ動いてきた。
  「鵺(ぬえ)」のように捉えどころがないーー
  我々がそう表現した国は、一貫して有力な兵器大国であり続けた。


  その兵器廠(へいきしょう)からは新鋭兵器が
  密かに東アジアにも流れていた。
  黒海に臨むムィコラーイウ岸壁に係留されていた空母「ワリャーグ」は
  中国の空母「遼寧」に姿を変え、
  巡航ミサイル「X55」も強権国家の手に渡っていった。


  ”プーチンの戦争” は国際法に照らせば寸分の弁解の余地もない。
  だからと言って、ゼレンスキーの言い分に寄り添うだけでは
  悲惨な戦いは止められまい。
  ロシアとウクライナの苦境に耳を傾けて停戦の機を摑み、
  核戦争の芽を摘む方策を模索すべき時だろう。
  これこそが先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)の議長国にして
  ヒロシマナガサキの惨劇を体験した日本の責務である。

                         (pp.4-5)


佐藤の「あとがき」から引用する。


  外交ジャーナリストで小説家の手嶋龍一氏は、
  インテリジェンス小説『ウルトラ・ダラー』(小学館文庫)、
  『鳴かずのカッコウ』(小学館)を読めばよく分かるが、
  ウクライナ(特にこの戦争が始まる前に日本人がほとんど関心を持たなかった
  西部のガリツィアやザカルパチア)を丹念に取材しているので、
  十分な土地勘がある。

                              (p.253)


本書の構成は以下の通り。


  まえがき 手嶋龍一

  第1章 アメリカはウクライナ戦争の "管理人”

  第2章 ロシアが侵攻に踏み切った真の理由

  第3章 ウクライナという国 ゼレンスキーという人物

  第4章 プーチン大統領はご乱心なのか

  第5章 ロシアが核を使うとき

  第6章 ウクライナ戦争と連動する台湾危機

  第7章 戦争終結の処方箋 日本のなすべきこと

  あとがき 佐藤優


    編集:中西恵子中央公論新社
    構成:南山武志
    本文DTP:市川真樹子