作家・柚木麻子の道案内で
林芙美子の作品に新鮮な光が当たった。
NHKテキスト「100分de名著/林芙美子『放浪記』」(著者:柚木麻子)。
「はじめに 「不幸な人」だなんて、とんでもない!」から引用する。
たい子(引用者注:平林たい子)によれば、
芙美子は友人関係もほとんど長続きしなかったといいます。
しかし、たい子から見た彼女は幸せな人だった。
ここが、芙美子と同時代を生きた男性の書き手と、
女性の書き手の大きな違いです。
(同テキストより引用)
私も、芙美子が不幸な人だとは思いません。
芙美子が色紙などに好んで書いた言葉に、
「花のいのちはみじかくて、苦しきことのみ多かりき」
というものがあります。
これまで多くの日本人は、
後半の「苦しきことのみ多かりき」という部分に注目し、
貧しい芙美子に同情を寄せていました。
しかし皆さん、注目すべきは前半です。
「花のいのち」ということは、芙美子は自分を花だと思っている。
このことを忘れてはいけません。
貧乏で満たされないながらも自分は花だとあっけらかんと言えるなんて、
やっぱり芙美子は幸福な人だと思いませんか?
今回は「芙美子は幸福な人であった」という観点から、
あらためて皆さんと『放浪記』を読んでみたいと思います。
私の周囲には、「話の時系列がよくわからない」という理由で
『放浪記』に挫折した友人が何人かいます。
しかし、日記文学の面白いとことは、
好きなときに好きなページを開いて読み進められることです。
例えば、気になった芸能人のユーチューブでも、
最初の投稿まで遡(さかのぼ)ることなく、
パッと目についた動画から見ると思います。
『放浪記』もそのくらいの気楽さで読んでみてほしい。
パッと本を開けば、必ずや胸をつかまれるおフミさんの文章が
飛び出してくるはずです。
(pp.8-9)
全4回の番組構成は以下の通り。
第1回 「悪」の魅力
第2回 お人好しの嫌われ者
第3回 旅と食で生き返る
第4回 「女流文学」を解き放つ
セイゴオさんの『放浪記』推薦文を見つけた。
本書はちょっとでも読み始めるだけで、
林芙美子の生き方にも、その個性にも、
たちまちぐいぐい惹きつけられるはずである。
当時の女性が書ける「心が生きた文章」なのだ。
ぼくは母に薦められてこれを読んだのだが、たちまち魅了された。
林芙美子が大好きにもなった。
自分のことを書いてみたいと思っている女性は、
ぜひともこの文章を読むといい。
勇気も湧くだろうが、文章の訓練にもなる(松岡正剛)。