クリッピングから
讀賣新聞2023年8月15日朝刊
読売歌壇（俵万智選）
今週の好きな歌3首、抜き書きします。
「飲むか？」ってあなたのくれるひと口が
ビールのなかでいちばん好きだ
川崎市 佐藤美加
【評】ふっと気づいてくれて、
すっと渡してくれるグラス（もしくは缶）。
確かな時と心の流れが、
映像化されて一首にピタッと収まっている。
そして、つまり、あなたが一番好き。
子供らに公園の水は伸ばされて
真夏の空は口を開けたり
横浜市 友常甘酢
【評】ふざけて放水しているのだろう。
それを水を伸ばすとした表現が面白い。
下の句の擬人化も、スケールが大きくてユニークだ。
さみだれの生駒の谷は
真っ白なくちなし咲かせ白く暮れゆく
生駒市 宮田修
【評】雨にけむるくちなしの白い花たち。
全体にS音とK音が響きあい、
音の景色を作っている。
結句の「白く」も印象的だ。
今週の、あと1首。
かき氷に微笑みながら子のかける
マグマのようなベリーのソース
小諸市 藤 雪陽
