セロファンとリボンを剥けば花たちは(大岩真理)

クリッピングから
讀賣新聞2024年1月29日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  いつもよりシャワーヘッドの位置高し
  そうだ息子が帰ってきたんだ

         つくば市 小林浦波


    【評】小さな違和感に宿るリアリティが素晴らしい。
       自分より背の高い息子なのだろう。
       シャワーヘッドの位置から、
       存在をかみしめる流れが自然だ。
       下の句の口語も生き生きとして、
       嬉(うれ)しさが伝わってくる。


  柿食えば鐘鳴る寺のあるならば
  軒の干し柿どの鐘ならす

        太田市 木戸健房


    【評】子規の句は、
       柿を食べたから法隆寺の鐘が鳴ったというわけではないが、
       そこをズラして踏まえている。
       干し柿に鳴らせる鐘があるという発想が楽しい。


  セロファンとリボンを剥けば花たちは
  力を抜いてやや生臭い

          東京都 大岩真理


    【評】よそ行きの服を脱いだ人のよう。
       下の句に、そこはかとないエロスが漂う。


今週のもう1首


  花林糖かりこり頭ぽりぽりと
  ラスボスめく数Ⅲの積分

       小諸市 藤 雪陽