まだ慣れてゐないだけだよ靴擦れに(小金森まき)

クリッピングから
讀賣新聞2024年2月19日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  銀紙がきみに折らせた鶴三羽
  翼にミントの香りを残す

     大和郡山市 大津穂波


    【評】まるで銀紙が望んで転生し、
       前世の香りを残す鶴になった物語のようだ。
       ミントチョコレートを包んでいた銀紙で、
       きみが鶴を折っただけのことなのに。


  つたなさと伝わらなさは同じだと思ってた
  そっと手をつなぐまで

            東京都 奈良岡 歩


    【評】手をつないだ今は、
       同じではないと気づいたということだろう。
       つたなくても、伝わることがあるのだ。
       「つたなさ」「伝わらなさ」の音の響きあいも
       魅力になっている。

 
  まだ慣れてゐないだけだよ靴擦れに
  絆創膏を貼るやうに言ふ

         千葉市 小金森まき


    【評】励ましの言葉だろうが、
       そんなに簡単な問題じゃないという複雑な気持ちが
       垣間見える。
       靴擦れの比喩が的確だ。


今週のもう1首。


  「耐えている」ことを「できる」と見做されて
  鯨の長い長い息継ぎ

              朝霞市 桐島あお