冷やされて 吹きてくる風 水張田の(井原茂明)

クリッピングから
讀賣新聞2024年6月27日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  「うざ」というコトバ使いしことのなし
  ぎょうざ屋の暖簾左端めくれて 

        宇都宮市 久保川賢一


    【評】謎解きの楽しさのある一首。
      「ぎょうざ屋」と書かれた文字の一部がめくれて
      読めないのだろう。
      目に飛び込んだ「うざ」について、
      しばし思いをめぐらせる。


  無洗米でも何回か研いでから
  炊いちゃうとこがめっちゃ母さん

       横浜市 紺屋小町


    【評】洗わなくてもいいのが無洗米なのだが、
      ついつい手間をかけてしまう。それが母さんらしさ。
      結句の口語が、めっちゃいい。


  冷やされて吹きてくる風水張田の
  おもて夕べのささなみは立つ

        市原市 井原茂明


    【評】田植えを前に水の張られた田んぼ。
      そこを吹くことで風が冷やされて届くのだ。
      まず風を感じてから、その経路を描写した上下句の順序が、
      臨場感を出して成功している。


水張田は「みはりだ」と読むのですね。
知りませんでした。
言葉の説明は万智さんの評の一行目にありました。
意味が分かると景色が浮かんできました。


今週のもう1首。


  自転車にあわせて歌う鼻歌は
  朝ドラごとに更新される

      大阪市 川田ゆかる