「自分の主治医は自分」という気持ちで(天野恵子)

クリッピングから
讀賣新聞2024年6月25日朝刊
人生100年の歩き方」天野恵子さん(内科医)②
聞き手・久田恵さん(作家)



  81歳の現役内科医、天野恵子さん(写真上・右)と、
  作家の久田恵さん(76)(同左)の対談の2回目。
  更年期のつらい症状に苦しんだ天野さんが、
  女性の体の変化や更年期以降の過ごし方について語ります。


  天野 閉経後3年目からは、
     下肢や腰にかけてのしびれや冷え、
     全身の関節の痛みも出てきました。
     患者さんを2人ほどみたら数分休む、
     という形で診察していました。
     自信があった記憶力も、集中力も落ちて、
     同じ時間に三つ予定を入れてしまったことがあって。
     落ち込みましたね。

  久田 治療はされたのですか。

  天野 著名な医師や様々な診療科を訪ねましたが、
     よくなりませんでした。
     どこに行っても治せないなんて、と、
     更年期障害についての日本の医療の遅れを実感したのも、
     女性外来を作りたいと思ったきっかけです。
     ただ、痛みや不調は、
     入浴して体を温めると緩和されました。

  久田 いつ頃まで続いたのですか。

  天野 不調は10年ほど続きました。
     60歳目前で、霧が晴れるように更年期が明け、
     心身が楽になりました。
     60代は老いを感じるどころか、
     「私の人生、さあこれから」と若返ったようでした。
     気力も体力もみなぎり、仕事に打ち込みました。
     (略)

  天野 私は75歳くらいの時に体重が突然5㌔ほど減り、
     軽い糖尿病も見つかりました。
     アフター更年期は、
     女性の体を守ってくれていたホルモンがなくなるので、
     自分で自分の健康を守っていかなくてはいけないのです。
     (略)

  久田 女性の体が加齢とともにどう変わっていくのか
     知る機会が今までなかったから、
     具体的に教えてもらえるのは参考になります。
     どんな対策をすればいいのですか。

  天野 「自分の主治医は自分」という気持ちで、
     体調や変化に関心を持つことです。
     規則正しい生活、バランスのとれた食事、適度な運動など、
     ストレスをためない健康的な生活を心がければ、
     恐れることはないですよ。