そんな瞬間はうれしくて叫んじゃう。『俺は生きてるぞ!』って。(稲田弘)

クリッピングから
毎日新聞2023年8月21日朝刊
小さな目標を達成する喜び「人生100年クラブ」
90歳のアイアンマン、稲田弘さんの原動力


  ピンと伸びた背筋に引き締まった脚、
  こんがりと日焼けした肌。
  1人住まいの自宅で、稲田さんは白い歯を見せて笑う。
  「年2回の健康診断は異常なし。
  骨折は何十回もあるけどね」
  (略)


  トレーニング以外にも神経を使うことはたくさんある。
  まずは朝晩の食事だ。
  朝食のメインはにんじん、ほうれん草、赤ピーマン、
  ごぼうなど14種の野菜とキノコ類を鶏胸肉などと一緒に煮込み、
  黒酢やサバの缶詰などで味を整えた具だくさんスープだ。
  飽きないようにだしを変えた2皿を用意する。


  「便秘知らず。豊富な食物繊維のおかげです」
  という現在のレシピには、
  管理栄養士や医師、料理番組から学び、
  食材を少しずつ加えてたどり着いた。


  夜も毎日同じで、青魚に玄米、みそ汁など素朴なメニューだ。
  ただし、みそ汁は豆腐、麩(ふ)、貝類、山芋と
  具だくさんにこだわる。
  野菜は主に八百屋で買い、
  調味料もできる限り体に良さそうなものを選ぶ。
  昼食はトレーニングの途中に
  コンビニエンスストアなどで買って済ませることが多いという。


  日常生活ではこの他、上手な体の動かし方や呼吸の仕方に
  意識を向けるようにしている。
  「『力を抜くポイントを変えてみる』とか
  『骨盤を使って脚を動かす』とか何でもいい。
  毎日一つ小さな目標を立て、やってみることをお勧めします。
  それを達成したときの喜びを感じることが継続のコツ」と言う。


  実は、体力の低下を実感することもあるという稲田さん。
  それでも、若い時よりも進化していると思える瞬間も訪れる。
  「前より楽に脚が動かせたり、楽に息をできたりする方法を
  この年齢になっても発見できる。
  そんな瞬間はうれしくて叫んじゃう。
  『俺は生きてるぞ!』って」
  (略)


  大会への出場を重ね、
  76歳にして初めてアイアンマン大会に挑んだ。
  制限時間内にゴールにたどり着けず失格になって落ち込むと、
  大会関係者に声をかけられた。
  「我流じゃ(来年挑んでも)結果は同じ。
  ちゃんと指導を受けなさい」


  稲毛ITC(インターナショナルトライアスロンクラブ)
  の門をたたいた稲田さんは、
  五輪選手らと同じ練習メニューを自分のペースでこなし、
  揺るぎない自信と実力を手に入れた。
  (略)


  「60歳はまだまだ若手。
  いくらでもできますよ」

                      【千脇康平】



(鎌田實先生の著書も参考になります。明るい気持ちで日々取り組めるのが何よりです)