日高敏隆『ネコの時間』(平凡社、2017)

通勤途上にあるA図書館は新刊コーナーが充実している。
本を借りたり返したりするときに必ず覗く。
興味を惹いた本が見つかれば
自動貸出機で手続きしてその場で借りていく。
これもその一冊。
日高敏隆『ネコの時間』(平凡社、2017)。



   STANDARD BOOKSは、
   百科事典の平凡社が提案する新しい随筆シリーズです。
   科学と文学、双方を横断する知性を持つ科学者・作家の
   珠玉の作品を集め、一作家を一冊で紹介します。
   (2015年12月)


第1期全8巻、第2期全6巻の14冊が既に刊行されている。
底本リストを見る。
よほど腕のいい編集者が日高の数多い著作から
丁寧に作品を選び、編んでいるのだろう。
「珠玉の作品」は単なる宣伝文句ではないことがよく分かる。



タイトルに惹かれて一作、また一作読んでみる。
科学者の手練れの文章を読んでいると、
感覚だけでない実証があって頭がすっきりする。
巻末掲載「もっと日高敏隆を知りたい人のためのブックガイド」が
またよくできている。
このリストからも二冊、さっそく図書館で予約した。



人物紹介で気になった文章があった。


   幼少期から筋金入りの昆虫好きだったが、
   父が昆虫を学ぶことに反対。
   教師によるいじめもあり自殺まで考えるが、
   小学校の担任米丸三熊が父を説得、
   昆虫研究が許された。


りっぱな先生が日高のそばにいて本当によかった。
米丸先生の説得で考えを変えた父親も偉かった。
こうした大人、家族がいなければ、
傑出の動物行動学者・日高敏隆は誕生していなかったし、
いじめで自殺していたかもしれなかった。


他の本数冊と並行して少しずつ読んでいたから
二週間では読み切れなかった。
次の予約も入れてきた。
また続きを読もう。



   編集:田中光
   編集協力:大西香織
   装丁:重実生哉


wikipedia:日高敏隆
(文中敬称略)