スクラップブックから
朝日新聞2019年4月22日朝刊
読者投稿欄「ひととき」
平らな美しい胸
北海道帯広市 伊藤昭子(あきこ)無職 75歳
昨年12月に乳がんの手術を受けました。
その後、放射線治療を経て、薬の服用のみになりました。
先日、医師より温泉入浴の許可が下りました。
温泉好きの私には、何よりの特効薬です。
帯広の銭湯の多くが温泉なので、浮き浮きと出かけました。
けれど、大浴槽に入るには勇気が要りました。
「エイッ!」と内心気合いを入れて、そろりと一歩。
最初に目が合ったのは、私より年上に見える人。
まだ生々しい傷を隠さずに
「ごめんなさい。気味悪いでしょ」と言うと、
「なんも。大変だったね」と温かい言葉が返ってきました。
すると、周りの若い人たちが
「ご自分で見つけたの?」と、次々に聞いてきました。
自分では全く気が付かなくて、
直腸がんの術後2年目の検診で見つけてもらったと答えました。
洗い場の隣は、「大変だったね」と声をかけてくれた女性でした。
彼女は「私たちの年代が積極的に公衆浴場を利用し、
乳がんの若い人たちも来やすくしてあげたいわね」
と言いながら胸をトンとたたきました。
全裸の彼女の平らな胸を、
私は「美しい!」と思いました。
乳がんの手術を受けた後、
勇気を出して銭湯に出かけた伊藤さん。
術後の伊藤さんの胸を見て、温かい言葉をかけた女性。
二人のやりとりを見て若い女性たちも
声をかけやすくなったのでしょうね。
投稿を読んでいる僕までホンワカさせてくれました。