1万円クラスに負けない書き味、「マイ・ファースト万年筆」(税別1千円)

クリッピングから
朝日新聞2019年9月2日夕刊
発創カンパニー パイロットコーポレーション
キッズ万年筆 大人もつかむ


  ペン先には笑顔のマーク。
  オレンジやライトグリーンのポップな色使い。
  子どもが自然と正しく握れる、緩やかな三角形のグリップ。
  1千円(税別)の万年筆「カクノ」は
  パイロットコーポレーション(東京都中央区)が2013年に発売、
  半年で年間目標の倍の30万本を売った。


  「それまでなかった本格的な子ども向け国産万年筆という狙いでした」。
  営業企画部高筆企画グループ係長、斉藤真美子さん(45)は振り返る。
  前年には若い男性を狙ったスタイリッシュで書き味の良い万年筆
  「コクーン」を3千円(税別)で販売。
  その開発にも携わった斉藤さんは
  「『1千円で』という経営側の注文はこのころからあった」と明かす。
  ただ、1千円で作れるのかという声も社内に少なくなかったそうだ。
  (略)


  小学生は胸ポケットに刺さず、筆入れを使う。
  クリップをやめ、転がりを防ぐ小さな突起を付けた。
  コスト削減のため部品は六つに絞り、
  キャップをカラフルにする一方、本体は統一。
  子どもにもわかりやすい説明書も付けた。


  コンセプトは「マイ・ファースト万年筆」。
  万年筆を使い続けてもらうため、こだわるべき所はこだわった。
  コクーンのペン先を使い、書き味とコスト減を両立。
  ペン先は一本一本、人の手で確かめる。
  (略)


  「万年筆の字は個性が表れて味わい深い。
  次の百年も使い続けてもらうにはどうすればいいか」。
  斉藤さんらは考え続けている。
                       (石村祐輔)



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パイロット 万年筆 カクノ FKA-1SR-RM 中字 レッド

パイロット 万年筆 カクノ FKA-1SR-RM 中字 レッド


「書き味は1万円クラスの万年筆に負けません」。
同社の斉藤真美子さんと雑村芽衣さんが
インタビューに答えて語っている。
万年筆フェチの僕は
カクノもコクーンもとっくに愛用しています。
どちらも万年筆の傑作、さすがはパイロットと感心していました。


斉藤さんの裏話を聞くと「なるほど」とうなずきます。
クリップをやめ、小さな突起を付けるなど細部に配慮すると同時に
コスト削減のために部品数を最小にし、ペン先を他製品(コクーン)と共通化する。
1千円(税別)の「マイ・ファースト万年筆」が誕生しました。
日本の文房具メーカーの底力、職業的良心を感じた記事でした。