クリッピングから
毎日新聞2021年3月6日朝刊
「今週の本棚」佐藤優評(作家、元外務省主任分析官)
『鳴かずのカッコウ』手嶋龍一著(小学館・1870円)
(イラストレーション/石原一博、ブックデザイン/鈴木成一デザイン室)
佐藤が推薦していたインテリジェンス小説
『ウルトラ・ダラー』『スギハラ・サバイバル』を連読し、
小説家としての手嶋の才能を知った。
続編を書いてほしいと願っていたら、
11年ぶりに新作が登場した。
主人公が変わり、舞台は公安調査庁だ。
佐藤の評を引用する。
公安調査官の秘密業務
法務省の外局である公安調査庁は秘密のベールに閉ざされた役所だ。
定員は1650人の小規模官庁で、公安調査庁のHPを開くと
<すべては国民の安全のために「情報の力で国民を守る」
それが公安調査庁です>と記されている。
(略)
「公安調査庁がたいした仕事をしているとは思えない。
必要ない役所だ」というようなことを言う人がいるが、
それは公安調査庁の実態を知らない素人だ。
評者は外務省国際情報局(現在の国際情報統括官組織)に
主任分析官として勤務していたときに
公安調査庁が作成した報告書を日常的に読んでいた。
足で取った機微に触れる情報には
外務省が持っていない貴重な内容のものがあり、仕事に役立った。
(略)
外交ジャーナリストの手嶋龍一氏は、
CIA(米中央情報局)、SIS(英秘密情報部いわゆるMI6)など
インテリジェンス機関の内情に通暁している。
独自の人脈構築能力を駆使して手嶋氏は
公安調査官から秘密業務の実態について
詳しいブリーフィング(説明)を受けたようだ。
その成果を活(い)かしつつ、
情報源が露見しないように細心の注意を払ってできたのが
ユニークなインテリジェンス小説『鳴かずのカッコウ』だ。
(略)
この小説によって公安調査官の努力が
国民に知られるようになることを評者は歓迎する。
重偽装した壮太(引用者注:物語の主人公・梶壮太)の活躍を記した
続編を読みたい。
「大竹まことのゴールデンラジオ」3月9日放送
「大竹メインディッシュ」にゲストとして手嶋が登場。
新作『鳴かずのカッコウ』や昨今の国際問題、内政について
大竹と20分強語り合った。
番組のポッドキャストで聴くことができる(下線部クリック)。
(手嶋・佐藤の共著で公安調査庁の存在、役割を知った)
[追記] 2021.3.16
『鳴かずのカッコウ』腰巻裏に
こんな予告を見つけました(しばらく、気づかなかった)。
英国情報部員スティーブン・シリーズ
待望の第三弾、2021年冬発売予定
『武漢コンフィデンシャル』
パンデミックの発生源を巡って、
米中が熾烈な情報戦を繰り広げるなか、
英国情報部員、スティーブン・ブラッドレーが、
11年ぶりに東アジアに還ってきた。
米・中・日・ロの諜報機関が
四つ巴のインテリジェンス・ウォーを戦う。
これぞ、僕が楽しみにしていた
『ウルトラ・ダラー』『スギハラ・サバイバル』の続編です。
コロナ禍で小説家・手嶋龍一のエンジンがフル稼働しているようです。
冬が来るのがいまから楽しみだぜ。