大竹まこと『俺たちはどう生きるか』(集英社新書、2019)に
こんな一節があった。
恥ずかしい話を思いだした。
10年以上前に私は本を書いた。
今読むと赤面する情けない文章が
ページをめくるたびに飛びこんでくる。
あろうことか、その本を
小説家の小林信彦さんにだけ送ってしまった。
「厚かましくも、本を出しました。
失礼を覚悟でお送りしました。
もしイヤならそのまま捨ててくださって結構です」
後に、小林信彦さんは『中日新聞』のエッセイで、
「近頃のタレントが書いた本」として、
小沢昭一さんの御本と一緒に紹介してくださった。
もちろんメインは小沢さんの本で、私のは数行であった。
私は嬉しくて、自宅の六畳間で躍った。
(p.191)
- 作者:大竹 まこと
- 発売日: 2019/07/17
- メディア: 新書
この本を探してみた。
『結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ』(角川書店、2004)
(初出:角川書店PR誌「本の旅人」:
「灼熱のぶどうジュース」のタイトルで一年間連載)
- 作者:大竹 まこと
- メディア: 単行本
「全ては夢の中」から引用する。
「本屋へ行けばただでくれる本(引用者注:角川PR誌「本の旅人」)ですから、
気楽に書いてください」などと言われたが、
ひとたび小冊子のページをめくれば、
そこには黒岩重吾や阿刀田高、花村萬月の名が躍っている。
あろうことか、私が連載を始めてからも
宮崎学や鴻上尚史(こうかみしょうじ)、佐高信(さたかまこと)まで、
私にとっては雲の上のような存在が、これでもかと連載を始めた。
私は何度も悪態をつき、連載を断っていたが、丁寧ではなかった。
私の中にある功名心を角川の担当者は見逃しはしなかった。
いま思えば頭の悪い無謀な話と気づくのだが、
そこは馬鹿のいいところで、
どんな恥をかくのか、そこまでの想像力はないのである。
私は、原稿料も知らずに引き受けてしまった。
(p.181)
ちなみに、「あとがき」に大竹がつけたタイトルはこうである。
馬鹿、溝(みぞ)と溝(どぶ)で溺れる
読書家でなければ、こんな題は思いつくまい。