大竹まこと『結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ』(角川書店、2004)

大竹まこと『俺たちはどう生きるか』(集英社新書、2019)
こんな一節があった。


  恥ずかしい話を思いだした。
  10年以上前に私は本を書いた。
  今読むと赤面する情けない文章が
  ページをめくるたびに飛びこんでくる。


  あろうことか、その本を
  小説家の小林信彦さんにだけ送ってしまった。
  「厚かましくも、本を出しました。
   失礼を覚悟でお送りしました。
   もしイヤならそのまま捨ててくださって結構です」


  後に、小林信彦さんは『中日新聞』のエッセイで、
  「近頃のタレントが書いた本」として、
  小沢昭一さんの御本と一緒に紹介してくださった。
  もちろんメインは小沢さんの本で、私のは数行であった。
  私は嬉しくて、自宅の六畳間で躍った。

                     (p.191)


俺たちはどう生きるか (集英社新書)

俺たちはどう生きるか (集英社新書)


この本を探してみた。


  『結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ』(角川書店、2004)
  (初出:角川書店PR誌「本の旅人」:
  「灼熱のぶどうジュース」のタイトルで一年間連載)



「全ては夢の中」から引用する。


  「本屋へ行けばただでくれる本(引用者注:角川PR誌「本の旅人」)ですから、
  気楽に書いてください」などと言われたが、
  ひとたび小冊子のページをめくれば、
  そこには黒岩重吾阿刀田高花村萬月の名が躍っている。


  あろうことか、私が連載を始めてからも
  宮崎学鴻上尚史(こうかみしょうじ)、佐高信(さたかまこと)まで、
  私にとっては雲の上のような存在が、これでもかと連載を始めた。


  私は何度も悪態をつき、連載を断っていたが、丁寧ではなかった。
  私の中にある功名心を角川の担当者は見逃しはしなかった。
  いま思えば頭の悪い無謀な話と気づくのだが、
  そこは馬鹿のいいところで、
  どんな恥をかくのか、そこまでの想像力はないのである。
  私は、原稿料も知らずに引き受けてしまった。

                             (p.181)


ちなみに、「あとがき」に大竹がつけたタイトルはこうである。


  馬鹿、溝(みぞ)と溝(どぶ)で溺れる


読書家でなければ、こんな題は思いつくまい。