兄弟と12年間過ごしたランドセル(小林淑子)

クリッピングから
朝日新聞2021年4月13日朝刊
読者投稿欄「ひととき」
兄弟のランドセル
(埼玉県蕨市 小林淑子 主婦 74歳)


  幼いころ、共働きの娘夫婦が帰ってくるまで預かった
  孫息子が3月で小学校を卒業した。
  7歳年上の兄から譲り受け、
  兄弟の小学校生活12年間を共に過ごした
  ランドセルからも、これで卒業となった。


  彼が生まれたとき、小1だった兄はそれは喜んだ。
  寝ている頬をつつき、可愛さあまってけんかもしょっちゅう。
  その弟は学校に通うのに憧れたのか、3歳ごろから
  「にいに(兄)のランドセルで学校へ行く」と宣言していた。
  それを聞いた兄は、ランドセルに傷がつかないように
  何度もランドセルカバーを取りかえて大切に使い、
  譲ると決めていた。


  卒業式の少し前、遊びに来た弟に
  「ランドセルまた使えるの?」と聞いたら、
  「丈夫にできているから使えるよ」という返事。
  ごく普通の黒いランドセルでも、兄弟にとっては特別なもの。
  途中で壊れないかと心配したけれど、
  立派に2人の学校生活を支えてくれた。
  ランドセルには「12年間がんばってくれてありがとう」
  と伝えたい。


  これから先、兄弟が離ればなれに暮らす日が来ても、
  同じランドセルを大事に使い続けた思い出を
  忘れずにいてほしい。


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