半藤一利/加藤陽子/保阪正康 [編著] 『太平洋戦争への道 1931-1941』(NHK出版新書、2021)

4年前放送された1時間50分のラジオ番組が
一冊の新書にまとまった。
半藤一利加藤陽子保阪正康 [編著]
『太平洋戦争への道 1931-1941』(NHK出版新書、2021)を読む。



「はじめに」(NHKラジオセンター 児島芳樹)から引用する。


  本書は、NHKラジオの特集番組
  「太平洋戦争への道〜戦前日本の歴史の選択」(2017年8月15日放送)をもとに、
  ノンフィクション作家の保阪正康さんに
  本編の議論を補足する解説を書き下ろしていただき、まとめたものです。


  番組では、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』で
  太平洋戦争へと至る歴史に新たな光をあてた
  東京大学教授の加藤陽子さんを案内役に、
  戦争の時代を体験し『昭和史』で
  歴史のドラマを生き生きと伝えた作家の半藤一利さん、
  『ナショナリズムの昭和』など戦争と昭和史について
  さまざまな角度から検証してきた保阪正康さんを迎え、
  三人の議論を通して満州事変から太平洋戦争へと至る
  日本の選択について考えました。

                    (pp.3-4)


巻末に三人からのメッセージが掲載されている。
半藤一利さんの言葉を引用する。


  日本人よ、しっかり勉強しよう 
  
  半藤一利


  昭和の日本人というのは、非常に不勉強だと思います。
  スターリンとはどういう人間か、ヒトラーとはどういう人間か、
  ルーズベルトとはどういう人間か、蔣介石とはどういう人間かということを、
  本当にきちんと勉強してはいなかったと思うのです。
  (略)


  不勉強な人たちが指導者になっても、
  その都度(つど)その都度大事なところで冷静になって考え、
  判断をするということは難しかったと思いますね。
  相手がわからないのですから。


  それで、自分たちの勢いに任せたような判断を
  次から次へとやってきた。
  その判断の間違いが積み重なって、
  どうにもならないところまできて、戦争になってしまった。


  要するに、その前にいくらでもリターンすることはできた、
  引き返せる局面はあったと思いますが、
  彼らは不勉強だからできなかったのです。


  今の日本人も同じように不勉強です。
  もしかしたら、今のほうがもっと不勉強かもしれません。
  本当のことを言うと、このままの日本で大丈夫かと、
  もう八十七歳の爺(じじい)は思うわけです。
  ぜひ、しっかりと勉強してほしい。
  若い人にはとくに勉強してほしいと思いますね。

                 (pp.216-217)


章立ては以下の通り。


  序章 太平洋戦争とは何か


  第一章 関東軍の暴走
  1931 満州事変ー1932 満州国建国


  第二章 国際協調の放棄
  1931 リットン報告書ー1933 国際連盟脱退


  第三章 言論・思想の統制
  1932 五・一五事件ー1936 二・二六事件


  第四章 中国侵攻の拡大
  1937 盧溝橋事件ー1938 国家総動員法制定


  第五章 三国同盟の締結
  1939 第二次世界大戦勃発ー1940 日独伊三国同盟


  第六章 日米交渉の失敗
  1941 野村・ハル会談ー真珠湾攻撃


巻末「参考文献」には三人の著作を始め、
5ページに渡って関連書籍が掲載されている。
本書を入口として、
太平洋戦争に至る昭和史を深掘りして学ぶのに重宝する資料だ。