佐藤優『仕事に悩む君へ はたらく哲学』(マガジンハウス、2021)

シマオという佐藤優の分身が、
佐藤優に相談し質問する設定が秀逸だ。
『仕事に悩む君へ はたらく哲学』(マガジンハウス、2021)を読む。


(ブックデザイン/TYPEFACE イラストレーション/iziz)


「プロローグ」から引用する。


  「シマオ、まだあの会社にいたんだ。
  給料下がる前に転職しといた方がいいよ」


  友人の言葉が胸に突き刺さる。
  僕は猫野シマオ。
  中小企業に勤める平凡な社会人だ。
  大きくはないけれど、
  そこそこ安定した会社に入社したと思っていたのに、
  世界的に流行した新型ウイルスの影響で、業界全体は大打撃。
  僕のボーナスももちろんカットだ。
  ただでさえ高くない中小企業の給料が、
  これからもっと削られると思うと気持ちが暗くなる。


  会社の将来性を心配した同僚は、
  どんどん次の会社へ移っていく。

  僕も少しずつ転職活動を始めたが、
  履歴書に書いた自分の経歴、実績があまりにもパッとせず
  自信喪失もいいところだ。


  最近頼まれる仕事といえば、
  誰にでもできるエクセルの表作成や、会議の時間調整と連絡。
  あとは、後輩がリーダーとなっているプロジェクトのフォロー役……。
  履歴書に堂々と書ける実績もあったものじゃない。


  入社7年。
  野心や上昇志向があったわけではないが、
  上司の言うことは聞いて、やるべき仕事はやってきた。
  会社に迷惑をかけない働き方をしてきたつもりだ。


  でも、急に不安になる時がある。
  将来、心配なく暮らせるだけのお金は稼げるだろうか? 
  今の仕事をずっと続けていけるだろうか? 
  幸せな人生を送れるだろうか?


  この「先が見えない不安」は、
  いつも、うっすらと僕にまとわりついてくる。
  周りのみんなはうまくやっているのに、
  なんで僕の人生はパッとしないんだろう。


  僕の人生、どこで乗り遅れたんだ?

                (pp.11-14)


全体の構成は以下の通り。


  はじめに 佐藤優はかく考える

  プロローグ

  第1章 豊かさの哲学ーお金で幸せは買えるのか

  第2章 人間関係の哲学ー良好な職場環境とは何か

  第3章 仕事の哲学ーやりがいとは何か

  第4章 負の感情の哲学ーネガティブ思考は変えられるのか?

  第5章 孤独の哲学ー一人は悲しいことか

  おわりに シマオ思う、ゆえにシマオあり

  参考文献


本書は、20代、30代の人たちが
実際に佐藤に相談してきた内容を基にしている。
「猫野シマオ」(佐藤は大の猫好き。シマと言う名の猫もいる)
という若者を設定したことでかえって現実感が増したように思う。


  ニュースメディア「Business Insider Japan」の
  有料サービス「Premium」連載
  『佐藤優さん、はたらく哲学を教えてください』
  に大幅な加筆・修正を加えて再編集。


  編集:松田祐子(マガジンハウス)