初めて番組を視たのが2020年7月。
吉本隆明『共同幻想論』を先崎彰容さんが解説した。
以来、Eテレ「100分de名著」ファンになって2年になる。
2012年からパーソナリティを務める伊集院光の番組スピンアウト著書、
『名著の話ー僕とカフカのひきこもり』(KADOKAWA、2022)を読む。
「まえがき」から引用する。
ところが、虫はやってきた。
出演したテレビ番組「100分de名著」で、
カフカの『変身』をとりあげることになったから。
番組冒頭で、「伊集院さん、カフカの『変身』をどう思われますか?」
と聞かれた僕は、意を決して鼻の穴から力を抜いて、答えた。
「若いころ読んでみたことはあるのですが、
どうにもこうにも理解できませんでした」
四〇年経ってわかったことは、ここで無理して大荷物を背負うと、
歩けなくなるということだ(ちなみに、僕のパソコンで
「かふか」を変換したら、最初に出たのが「過負荷」だった。
うまいこと言いやがる)。
ところが、その番組の冒頭で、
ドイツ文学の先生(引用者注:川島隆さん)がおっしゃった、
ある一言がきっかけで、急に負荷が吹き飛んでしまった。
以来、僕にとってカフカの『変身』は、
シュール? 不条理? とんでもない。
<あるあるネタ>だ。
理解できすぎるほど理解できる<僕の名著>になった。
(pp.4-5)
「あとがき」から引用する。
(この番組を)「素晴らしい」と書いたところで
お恥ずかしいのですがーー、
僕はこの番組に出演させていただいております。
さらにお恥ずかしいことに、
この番組での僕の役割は「わかってない人」です。
番組収録に先駆けて、講師はもちろん、アナウンサーも、
テーマとなる本をしっかり読み込んでいます。
が、僕は読みません。
僕の名誉のためにきちんといわせてもらいますと、
事前にテーマとなる名著を読むことを禁止されています。
名高い本を読んだことのない人は、
名高い本を誰よりも知り尽くした専門家と同じくらい、
実は貴重なのです(いいすぎ)。
(pp.185-186)
この本では以下3冊の名著を取り上げる。
カフカ『変身』 川島隆x伊集院光
”虫体質な僕ら” の観察日記
柳田国男『遠野物語』 石井正巳x伊集院光
おもしろかなしい、くさしょっぱい話たち
神谷美恵子『生きがいについて』 若松英輔x伊集院光
人生の締め切りを感じたとき出会う本
(対談構成:斎藤哲也)
唯一の不満をあげれば、
あれだけ高いクオリティの番組スピンアウト本なんだから
3冊と言わず、せめて10〜12冊分くらい読みたかった。
読者の年齢層を考え、大きな文字で読みやすく組んだから
3冊で打ち止めになったのかな(まさか)。
一視聴者、一読者として続編にも期待する。