上白石萌音・河野万里子『往復書簡「赤毛のアン」をめぐる言葉の旅』(NHK出版)

クリッピングから
朝日新聞読書サイト「好書好日」2022年7月22日配信
上白石萌音さん&翻訳家・河野万里子さんインタビュー


(サイト「好書好日」より)


  俳優の上白石萌音さんと翻訳家の河野万里子さんによる
  「翻訳書簡『赤毛のアン』をめぐる言葉の旅」(NHK出版)が
  7月25日に刊行されます。


  NHK「ラジオ英会話」のテキストに連載されていた
  二人の往復書簡を収録した本書には、
  上白石さんが河野さんの助言を受けながら、
  『赤毛のアン』の原文を翻訳していく過程が収められています。


  その共同作業はいったいどのような「旅」だったのか、
  上白石さんと河野さんにお話を聞きました。

              (文:嵯峨景子 写真:加藤梢)


    ーー往復書簡を通じて、『赤毛のアン』の名場面を翻訳されて、
      特に印象に残った箇所、苦戦した箇所はありますか?


  上白石 情景描写が本当に難しかったです。
      英文も長くて複雑になることが多いので、
      まず読解が難しいんですよね。
      加えて、情景描写と心情が重なり合っていたりもする。


      そこを読み解けたとしても、文化が異なるので
      カナダでは当たり前にあるものが日本ではなじみがなかったりします。
      「ウィンシー織」などと言われても、すぐにはわからないじゃないですか。
      それをどう訳せばいいのかと悩んで、行き詰まることが多かったです。


     第8回で登場するアンのお部屋、
     月の明かりが……という箇所も悩みました。


       It was as if all the dreams, sleeping and waking,
       of its vivid occupant had taken a visible
       although immaterial form and had tapestried the bare room
       with splendid filmy tissues of rainbow and moonshine.

             (Chapter 20, A Good Imagination Gone Wrong)


  河野 そう、あそこね! 
     私も今、同じ箇所を思い浮かべていました。
     「まるで虹と月光で織り上げられたきらめくばかりのヴェールのように」
     って私が訳したところですね。


  上白石 私は先生にいただいた訳を読むまで、
      その情景が全然思い描けてなくて。
      なんかもう、赤ちゃんのように
      ハイハイでどうにか進んでいったみたいな感じ。


  河野 原文が3〜4行くらい続く長い一文だったので、
     かなり訳しにくかったんですよね。

     (略)



朝日新聞2022年8月6日朝刊「好書好日」でもこの対談が紹介された)


松本侑子さんによる全訳『赤毛のアン』)