この夏も一気にやったぼくは夕立(畑 依裕)

クリッピングから
讀賣新聞2022年9月19日朝刊
読売歌壇(俵万智選)
今週の好きな歌3首、抜き書きします。


  こつこつと終わらせたいがこの夏も
  一気にやったぼくは夕立

         大阪市 畑 依裕


    【評】夏休みの宿題だろう。
       今年こそはと思っても、なかなかコツコツとはいかないもの。
       そんな自分を否定するのではなく、
       勢いのある夕立にたとえた結句が新鮮だ。


「僕」じゃなく「ぼく」と表現していることに
書き写しているとき気づきました。


  脇差のように雨傘たずさえて
  東京行きの列に並べり

        大阪市 toron*


    【評】脇差(わきざし)だから、
       いざという時のための小振(こぶり)の傘だろう。
       東京へ行くときの緊張感や身構える感じが、
       この比喩でうまく捉えられた。


「いざ東京へ! 勝負っ!」
作者の秘めた心中が「脇差」の一語で伝わってきた。


   遠蛙エピローグのごと鳴き出して
   大雨洪水警報解除

         松江市 犬山純子


「遠蛙」って想像力の広がる言葉ですねぇ。
大雨がおさまった、雨上がりの広い風景が見えてくる。