佐藤良明『英文法を哲学する』(アルク出版、2021)

英文法と哲学がいったいどんな関係を持っているんだろう。
佐藤良明『英文法を哲学する』(アルク出版、2021)を読む。



「おわりに」から引用する。


  私はこれまで英語または英語教育について、
  いろいろな場でお話ししたり、
  エッセイを書いたりする機会がありましたが、
  ここまで踏み込んだ議論をするのはこれが初めてのことです。
  直接のきっかけは2012年の『ENGLISH JOURNAL』に
  「英語ができない病」という連載の場を用意していただいたことでした。


  私たちは単に英語ができないだけではなく、
  ある特定の種類のできなさを、
  教育を通して習得しているのだという実感に基づいて、
  ではどうしたらいいのかということを考えた論考です。
  その仕掛け人の永井薫さんに引っ張られるようにして、
  10年後の今日、最初から書き下ろす形で
  この単行本にたどり着くことができました。
  (略)

                      (p.237)


「第0章 はじめに」から引用する。


  意味を運ぶ文章は、
  基本的なパターンを繰り返して動いています。
  英語のパターンは動態です。
  時間の中で起こる運動であり、
  その動的パターンこそ「文法」なのです。


  どうやったら英語で立ち続け、動き続けていられるか。
  それには英語の構造を、すなわち文法を、
  内面化することが必要です。
  むしろ「型」と言ったらいいでしょうか。


  自転車の喩(たと)えからは降りて、
  今度は空手の「型」を考えてみてください。
  あの型を繰り返し練習することで、自分が強くなる。
  英語も同じです。


  自分を英語の型にはめていく。
  それはたくさんの知識を一つずつ手にして、
  英語を「征服」していくというのとは違います。
  むしろ英語という動的秩序に、自分をどう収めていくか。
  何を得るかだけではなく、
  何をなくしていくかという問題でもあります。
(太字著者)


  英語の中へ少しでも潜入するには、
  今の自分の思考の構えをどう崩し、どう改めたらいいのか。
  それがこの本のテーマです。

                         (p.13)


(佐藤良明、柴田元幸両先生が中心になって編んだ東京大学教養学部の英語教科書)