池上彰『新聞は考える武器になるーー池上流新聞の読み方』(祥伝社黄金文庫、2023)

コンビニで新聞を買うとき、必ず2紙購入するようになったのは
池上彰さんの助言を取り入れたからだ。
池上彰『新聞は考える武器になるーー池上流新聞の読み方』
祥伝社黄金文庫、2023)を読む。



「文庫版はじめに」から引用する。


  そんな新聞好きの私に新聞を読み比べ、
  縦横に筆を振るってもらって構わないという機会を与えてくれたのが、
  朝日新聞でした。
  「池上彰の新聞ななめ読み」と題して連載を続けていました。
  それが、ある事件をきっかけに大騒動となり、
  朝日新聞もライバル紙も部数を大きく減らすことになりました。
  その顛末は本文をお読みください。


  いったんは連載がストップしたものの、再び連載を続け、
  途中までの連載をまとめたのが、この文庫の元になった単行本です。
  2016年から2019年までをまとめて出版しましたが、
  その後の2021年分までの連載分を追加して、この文庫本になりました。

                             (p.5)


続いて「はじめに」から引用する。


  こんな現実を見ると、新聞というのは、
  民主主義を支えるインフラだと痛感します。
  とはいえ、新聞社の側にも問題があります。
  記者たちが間違ったエリート意識を持ち、
  世の中の常識から乖離(かいり)したり、
  専門用語を駆使して読者が理解できな記事を書いたり、
  間違ったことを報じても間違いを認めなかったり、
  そんなことを続けていたら、
  新聞が読者から見放されるのは当然のことでしょう。


  それではいけない。
  そんな思いから、朝日新聞で「池上彰の新聞ななめ読み」と題して、
  新聞記事の比較検証やわかりにくい記事の批判を続けてきました。 

                            (p.7)


最後に「おわりにーー最近は、お行儀よすぎでは」から引用する。


  そもそものコラム開始は、2007年4月でした。
  当時の朝日新聞東京本社夕刊編集部の求めによるものです。
  「いろんな新聞を読み比べる論評を毎週執筆してほしい。
  何を書いても自由で、内容に関しては注文はつけません。
  朝日新聞の記事の批判も歓迎します」というものでした。
  なんと太っ腹なことか。
  朝日新聞の余裕を感じさせましたね。


  コラムのタイトルは、どうするか。
  私の提案で「新聞ななめ読み」と決まりました。
  たくさんの新聞を読むために、ざっと「ななめに読む」こともあるし、
  新聞記事を「斜(はす)に構えて」論評することもあるだろうから、
  という趣旨です。
  毎週月曜日の夕刊に掲載が始まりましたが、大阪本社は掲載しませんでした。
  大阪本社は、東京本社とは編集権が別だからです。
  (略)


  そのうちに、
  <朝日新聞の記者は月曜日の夕刊では真っ先に
  「新聞ななめ読み」に目を通す>
  と言われるようになったそうです。
  自分の記事が俎上(そじょう)に載っていないか
  気になってのことでしょう。


  このコラムは10年3月まで続きましたが、
  毎週テーマを決めて新聞記事を論評するのは大変な重労働です。
  そこでやめさせてほしいとお願いしたところ、
  それでは朝刊のオピニオン面で月1回のコラムとして継続しないかと
  声をかけていただきました。
  それなら負担も減ると考え、提案をお受けしました。
  今度は大阪本社でも掲載されることになりました。


  ところが、14年8月、事件が起きました。
  朝日新聞が過去の従軍慰安婦報道を検証する
  特集記事を掲載することになったので、
  コラムで取り上げて欲しいと要望されたのです。
  これまでコラムで取り上げるテーマについて注文がつくことはなく、
  珍しいことではあったのですが、
  大事なテーマであるだけに、論評することを承諾しました。


  朝日の検証記事は、過去に朝日が報道した
  「済州島で200人の若い朝鮮人女性を『狩り出した』」という吉田証言が
  虚偽であることを認め、これを報じた朝日の記事を取り消したものです。
  (略)

                          (p.332-334)



    ◆本書は、2019年11月、小社より単行本
     『考える力と情報力が身につく 新聞の読み方』として刊行された作品を、
     加筆・修正のうえ文庫化したものです。
     第二章以降は、朝日新聞で連載した「池上彰の新聞ななめ読み」の
     2016年10月〜2021年3月掲載分から抜粋し、編集・加筆修正したものです。

                            (編集協力/長田幸康)