『宗教と生命(いのち)』(KADOKAWA、2018)


勤務先から自宅に帰る路線駅にあるA図書館に寄る。
『宗教と生命(いのち)—激動する世界と宗教』
KADOKAWA、2018)を借りてきた。



2018年3月21日、
有楽町朝日ホールで行われた連続シンポジウム
「激動する世界と宗教 私たちの現在地」
(主催・角川文化振興財団、共催・朝日新聞社KADOKAWA)の
第3回講演録を加筆修正。書き下ろし原稿を加えた一冊だ。


登壇者は池上彰佐藤優松岡正剛、安藤泰至、山川宏の5人。
僕も第1回第2回は朝日ホールで聴講した。
第3回もチケットを購入して楽しみにしていたが、
よんどころない事情で行くことが叶わなかった。
講演録が出版されることは予告されていたので、
心待ちにしていたのだ。


三回のレギュラー登壇者は
池上、佐藤、松岡の三人。
僕が知る限り、三人の顔合わせは初めてだ。
本書には三人の特別座談会が掲載されていて
シンポジウムに参加した人にもプラスアルファが楽しめる
オトクな内容になっている。


例えばこんな会話が飛び交う。


   池上 宗教のほうから見ると、
      働かなくていい社会ではなく、
      働くことができない地獄の社会が現われるのか、
      という問題の立て方になるでしょうか。


   松岡 かなりきつい問題になりますね。
      地獄かどうかはわからないけれど、
      まるで源信(げんしん)の『往生要集』や
      ダンテの『神曲』にあるような世界が生じることになる、と。


   池上 煉獄(れんごく)(天国と地獄の間、贖罪(しょくざい)を
      終えていない霊魂が苦しみを受ける場所)ですね。
                        (pp.208-209)


   佐藤 今回のシンポジウムを通して、
      情報工学系の専門家は結果が出ればそれでいい
      と考えていることが実に印象的でした。
      (略)
   

      私は、自分と同世代から下の
      いわゆる思想系の畑の人たちに、
      項目やテーマのマッピングはするものの、
      みずからの立場を明確にしない人が多いことが
      不思議だったのですが、
      ”先に結果が出ればいい”と同じですね。
      ”分類すればいい”と。
      いまの世の中はこういうふうに動いているのか! 
      と感じたものです。


   松岡 これからしばらくの間は、
      そのようなデジタル思考の動きが続くでしょうね。
                    (pp.211-212)



三人のシンポジウムはもっと見たい、もっと聴きたい。
角川文化振興財団朝日新聞社KADOKAWA
続編を期待する。
充実した内容に対して
参加しやすい安価な入場料設定にも好感を持った。


宗教と暴力 激動する世界と宗教

宗教と暴力 激動する世界と宗教

(第1回、第2回の講演録も出版されている)


本書は4部構成。
「第II部 基調報告」「第III部 総合討論」の編集に
斎藤哲也が参加している。